イギリス都市計画定点観測

「Street votes」をめぐる委員会審議 (「Levelling-up and Regeneration Bill」が国会に上程されました(その3 ))

法案の委員会審議は7月19日まで進み、そのあと長い夏休みに入りました。ちょうどその夏休み前最後の委員会にて第96条の「Street votes」が審議されたので、議事録からその模様をできるだけリアルに抜き取ってみます。 実は「Street votes」は今回の法案で「…

『RESCALING URBAN GOVERNANCE』(2010年代のイギリス都市計画を理解する枠組み)

「2010年代のイギリス都市計画はどんな感じでした?」と問われてどのように答えるか? 実際、2021年2月にそのような機会がありその際用意した枠組みが「イギリス都市計画をウォッチする~リ・スケーリングと都市計画~」でした。(下図) ここでは「グローバル」…

「Levelling-up and Regeneration Bill」が国会に上程されました(その2 : 下院・委員会審議)

2022年5月11日に下院(House of Commons)に法案が上程されたあと、「1st reading=形式的なもの」「2st reading=法案に対する包括的質疑」を経て、6月21日から委員会審議がはじまりました。6月21日と23日の委員会において各界から参考人を呼んで質疑があったあ…

エリザベスラインが(ようやく)(一応)5月24日に開通 (ロンドンイノベーション(9))

「3年半遅れで」明日、ロンドンのエリザベスラインが開通します。以前使われていた「クロスレール」という名称のほうがロンドンをどう横断するかがイメージしやすいこの路線。「(ようやく)」をつけたのは、これまで何度も何度も延期されたからです。加えて、…

Combined Authority (その3)

審議がはじまった「Levelling-up and Regeneration Bill」ですが、その条文の約3分の1を占める「パート2 Local Democracy and Devolution」の主題は、Combined Authority (合同事業機関) をイングランドのどこにでも設立できるようにすることです。特にこれ…

【研究ノート】Levelling-up and Planning [2023.11.7更新]

2010年代のイギリス都市計画の特質を「Localism and Planning」ととらえて右帯の「リンク集」の1つで【研究ノート】として編集してきましたが、「Levelling-up」を政策目標とする動きが具体化してきました。このこととも関連しながら都市計画システムも大き…

「(白書) Levelling Up the United Kingdom」をめぐる評価

直近3つの記事において、5月11日から13日の新情報を新法案、都市計画システム構築過程、財源の3つの側面から紹介しましたが、これらは単なる「紹介」にとどまり「評価」まではできていません。 そこで最新の『town and country planning(2022年3月4月合併号)…

「levelling up」のための財源群のラインナップ

5月11日、12日に続き5月13日は、「levelling up」のための財政措置に関する情報が公表(=この時点でのアップデート)されました(⇒関係資料)。これはEUをブレグジットにより脱退したあと、EUへの支出金を拠出する必要がなくなり自らの考えでかなりの財源を使え…

「The future of the planning system in England」(2022.5.12公表)

新法案(⇒昨日記事)の内容が明らかになった翌日の5月12日に、都市計画システムの将来につき政府の考えを説明した「Future of the planning system in England: government response to the Select Committee report」がホームページにアップされました(⇒関連…

「Levelling-up and Regeneration Bill」が国会に上程されました

聞き慣れない用語ですが、ボリス・ジョンソン首相が2019年の選挙戦で保守党の公約として掲げた「levelling up policy」を実現するべく、その基礎となる法案の審議が2022年5月11日にはじまりました。ここでは「levelling up policy」を「レベルアップ政策」、…

2021年7月20日はデザインをめぐる判断基準の転換点になるか?

Town & Country Planning 2021年11/12月号にはもう1つ、「ending the lottery of design-based planning appeals」と題する重要そうな記事が出ています。ロンドン大学のカルモナ教授によるもので、長年の懸案だった都市計画におけるデザインの良し悪しに関…

サッカースタジアム建設による世界遺産登録剥奪(リヴァプール市)をめぐって

先週届いたTown & Country Planning 2021年11/12月号をペラペラめくっていると、「lessons from a sorry world heritage saga」との見出しが目に入りました(p392-398)。昨年7月にリヴァプールの世界遺産(Maritime Mercantile City)登録が剥奪されたことに対…

『NEIGHBOURHOOD PLANNING』(都市は進化する53)

「近隣計画」が制度化されて10年。実践例も蓄積されて、5年を過ぎた頃からこの制度の評価がいろいろとなされてきました。 1行で評価をまとめるなら、「成果はあった。しかし改善すべき点も多い」と月並みな表現になってしまいますが、2020年にROUTLEDGEから…

中心商店街(high street)の8割が住宅に転用されうる新制度が8月1日に発効

Town & Country Planningの7・8月合併号の中に、「our vulnerable high streets – death by permitted development?」と題する4頁の論説が出ています。 日本でも新型コロナの影響で商店街の飲食業などが閉店に追い込まれるなど、「これからの都市のあり方」…

ロンドンプラン2021

2021年3月に、新しいロンドンプランが公表されました。 2004年(ケン・リビングストン市長)、2011年(ボリス・ジョンソン市長)に続く、サディク・カーン市長によるロンドンプランです。 https://www.london.gov.uk/what-we-do/planning/london-plan/new-london…

大胆な都市計画制度改革を提起した白書「Planning for the Future(2020.8)」その後

裁量による判断が伝統のイギリス都市計画。これでは時間ばかりかかり民主的でもないと、昨年8月に白書「Planning for the Future(2020.8)」が提起されました。ごく大まかにいえば、事前に基準などを決めておきそれに合っていれば開発を認める領域を、近年の…

大気の質や公衆衛生の観点から不服申立てが却下されたはじめてのケース

『Planning』誌の2020年3月号に「CORONAVIRUS IS NOT THE ONLY DANGER IN THE AIR」と題する「Opinion」が掲載されています(p9)。 その内容と文脈を少し広めに紹介します。 2020年1月31日午後11時にEUを離脱したイギリスで今、たいへん意欲的と自認する環境…

「普及」の観点からみた「横浜地域まちづくり」と「イギリス近隣計画」

先日の記事で、イギリス近隣計画のレファレンダム通過件数が839件と紹介しました。ロンドンに限ると先日紹介したサウスバンクとメイフェアが加わり15件。制度化されてから約8年とすると、イングランド全体で年間100件強、ロンドンで年間2件が平均です。百万…

eBook『イギリス近隣計画 その政策・制度・運用』

本ブログに関連するさまざまな成果を「eBook」の形でまとめてみよう、というこで試行錯誤します。 その第1号が『イギリス近隣計画 その政策・制度・運用』。 右帯のリンク集にある「【研究ノート】Localism and Planning」が長くなりごちゃごちゃしているの…

「Big Society」と「Localism(近隣計画含む)」の政策評価

2015年に出版された『Planning against the Political』(副題:Democratic Deficits in European Territorial Governance)という図書の中で、Allmendinger教授らによる「Post-political regimes in English planning from Third Way to Big Society」との論考…

レファレンダムを通過した近隣計画が839に(2019.7.31時点)+全件Map

近隣計画。 ついこのあいだ「200件を超えた」と思っていたら、それは2016.7.27のこと。それから3年で639件増えて839件になっていました。 このことは政府の最新の「NOTES ON NEIGHBOURHOOD PLANNING」で(2019.9月発行。下記URL) https://www.gov.uk/governme…

サウスバンク&ウォータールー近隣計画(ビジネス近隣計画)の投票が10月24日に行われます(ロンドンにおける近隣計画の最新動向(8))

ロンドンを訪れた人の多くが訪れる「サウスバンク」。ターミナル駅のある「ウォータールー」を含むこのエリアの活発かつユニークな都市計画の歴史は古く、一言では書ききれませんが、このエリアの近隣計画案への投票が2019年10月24日に予定されました。居住…

イノベイティブな政策の波及 (近隣計画をめぐる新トピック(9))

TPR(Town Planning Review)誌2018年1号に「Neighbourhood planning and the production of spatial knowledge」という論文が掲載されています(著者はQuintin Bradley)。その中で、本ブログの「近隣計画をめぐる新トピック(3)」で取り上げたリゾート地セント…

「美の委員会」中間レポートが話題になっています

最近届いた雑誌Planning2019.7.19号をペラペラめくっていると、最初の大きな記事の見出しの「beauty commission’s」という文字が目に留まりました。都市計画の雑誌に「beauty」という文字を見るのも新鮮な(かなり久しぶりな)感じがあるのと、さらにその「bea…

3つの近隣計画で同時に全市をカバーしたTORBAY(近隣計画をめぐる新トピック(8))

本日昼に手にした雑誌『Planning』2019.5.24号をペラペラめくっていると、最終ページ(p32)に「Torbay adopts total plan coverage」の文字が。「Torbayってどこ?」と読み進めると、「Torquay」を含む3つの近隣計画が同時に、この5月2日にレファレンダムを通…

ロンドンにおける近隣計画の最新動向(7):Ham and Petersham近隣計画(2018-2033)

「リッチモンド区の都市計画の中での近隣計画の文脈も含めて興味が湧くところです」とした、当区最初の近隣計画です。今、「当区最初の」としましたが、見たところ、後に続くものはありません。なぜHam and Petershamは近隣計画を策定したのか、なぜ他の近隣…

ロンドンにおける近隣計画の最新動向(6):Knightsbridge近隣計画(2018-2037)

最も注目している第10号から。 注目点を先にあげると、第一に、ほぼ区全体にわたり近隣計画の策定に取り組んでいるWestminster区の第1号という観点から、他の取り組みの現状をフォローします。第二に、計画の質の観点から、本計画の質がどのように成り立って…

ロンドンにおける近隣計画の最新動向(5):第8〜11号の話

2017年10月にロンドンで7番目の近隣計画がレファレンダムを通過しました(⇒関連記事)。その後少し間が空きましたが、2018年5月から10月にかけ、4つの近隣計画がレファレンダムを通過したと、Planning2018.11.9号に紹介されています(p32)。それらは、第8号 201…

新NPPF(2018.7改定)について

「近隣−市町村−広域−サブリージョン−リージョン−国−超国家の間の、どこが何を決めるべきかというシステム調整・システム分担の方向を決める」ために、いろいろな動きが続いています。都市計画システムの基本政策に限ると、NPPF(National Planning Policy Fra…

近隣計画に関するパーカー教授の特別講演会が開催されます(12月6日)

イギリスで2011年に法制化された近隣計画制度。その実証研究の第一人者として知られるレディング大学のパーカー教授の特別講演会が開催されることになりました。 12月6日の18時30分から。場所は日本都市計画学会です。 http://www.cpij.or.jp/com/iac/lectur…