都市イノベーション開墾

DETROIT FUTURE CITY (2013)

本年の『都市計画論文集』に、デトロイトの新しい取り組みに関する2つの論文が掲載されました。 『DETROIT FUTURE CITY』は両者に共通する研究の出発点で、縮減の避けられないという意味で世界最先端の都市における、新しいタイプの都市計画マスタープランで…

WORLD HAPPINESS REPORT 2015

昨日(2015.12.7)の日経新聞オピニオン欄にジェフェリー・サックス氏(米・コロンビア大学地球研究所所長)の論説が掲載されました。同じ頁の左隣に掲載された「ニューモダン」論と合わせて、たいへん興味深い内容なのですが、ふと、ジェフェリー・サックス氏が…

『里海資本論』

角川新書2015.7.10刊。井上恭介(NHK「里海」取材班)著。 里海とは、「人間の暮らしの営みの中で多年の間、多様に利用されていながら、逆に、そのことによって自然の循環・再生が保たれ、しかも生物多様性が増加しているような海」と理解した藻谷浩介氏が解説…

LATIN AMERICAN URBAN DEVELOPMENT INTO THE 21st CENTURY

Palgrave,2012刊。Dennis Rogers他編。 ボゴタ(⇒ 『Happy City』 )とメデジンの都市計画(⇒昨日の記事)がなぜ「成功した」のか? なにをもって「成功」としているのか。「成功」に至る背景はなんだったのか。本当に「成功した」といえるのか? 昨日とりあげた『…

SOCIAL URBANISM AND THE POLITICS OF VIOLENCE

コロンビアのメデジン市の都市計画をテーマにしている卒論生(Oさん)がいて、“Social Urbanism”という概念が最近気になるようになりました。もしかすると、21世紀の都市イノベーションを左右する重要な概念かもしれない。とはいえ、もしかするとたまたまメデ…

GNHと都市計画

「信号の無い」GNHの国ブータンは、この10年くらいで大きく変わりつつあります。その変化が最も大きくあらわれていると考えられる首都ティンプーを通して、「GNHと都市計画」という視点で考えてみます。(なお、Geley Norbu氏が書いているBlog(https://geleyn…

『Planning Middle Eastern Cities(2004)』+『The Evolving Arab City(2008)』

「ドバイ開墾(10) 」で紹介したYasser Elsheshtawy氏が実は標記図書(いずれもROUTLEDGE刊)の編者だったことを知り、これら成果はマンフォードが書いていないこれら地域の諸都市の「世界史・文明史・地球史」の一端なのだろう(になるのだろう)とワクワクしな…

THE CITY IN HISTORY (邦訳『歴史の都市明日の都市』)

ルイス・マンフォード著、1961。 大型で重たく箱入りの邦訳版ではずっと読めなかったこの本が、ペーパーバック版で紀伊国屋書店に並んでいるのが目に留まり、持ち歩いているうちについに最後のページに到達しました。 都市イノベーション「開墾」に関係しそ…

『さらば、資本主義』

明日が発行日とされているこの本(佐伯啓思著、新潮新書641)。最後のほうで資本主義に「さらば」する思考は刺激的ですが、トマ・ピケティの評価のしかたにおいて共鳴できる部分があり(⇒関連記事1)、「都市イノベーション開墾」を考えるきっかけの1つとします…

『これからの日本に都市計画は必要ですか?』

「えっ、日本でも都市計画やってるの?」 「、、、」 これが1993年に30代の自分がイギリスで体験した最もくやしい言葉でした。 港北ニュータウン研究会第100回の日(おととい)、『これからの日本に都市計画は必要ですか?』(学芸出版社、2014.6.1刊)の編著者M…

ドバイ開墾(10) : ドバイゼーション

これまでみてきたドバイの都市開発を、「ドバイゼーション」と呼び世界中の「ドバイゼーション」を観察している学者がいます(UAE大学のYasser Elsheshtawy准教授。URLはdubaization.com)。ただし、定義のようなものは無いようで、むしろ「これはドバイゼーシ…

ドバイ開墾(9) : 地球温暖化とドバイ

アブダビ空港の隣に環境未来都市「マスダールシティ」が建設途上です。2006年に発表されたこの計画。リーマンショックの影響でかなり工事が遅れ2025年をめざす計画に改定されたようですが、最近になって、徐々にその成果がみえてきたという報告が増えてきま…

ドバイ開墾(8) : ドバイ/アブダビ大都市圏

これからしばらくの間、「ジュベル・アリ」という地名が情報発信されるはずです。現在のメトロの南の終点で、ドバイ万博2020の開催地もこの後背地。「ドバイ・サウス」という言い方や、「マクトゥーム国際空港」という固有名詞がより多く情報発信されるかも…

ドバイ開墾(7) : 都市の歴史

新しいドバイばかりみていると、人間の欲望だけが際立って、「ネオリベラリズム都市」ドバイの烙印が押されてもしかたない状況です。9月2日に発売された『ドバイ超高層都市 21世紀の建築論』(松葉一清・野呂一幸著、鹿島出版会)ではブックカバーに“天上の造…

ドバイ開墾(6) : ブルジュ・ハリファ

リーマンショックに見舞われながら、2010年にとにもかくにも完成したブルジュ・ハリファ(「陸のエマール」による開発)のメッセージはシンプルです。 世界一高いビルであること。けれども単に高いということであれば、それはきわめて短命で、既にドバイ内でも…

ドバイ開墾(5) : パーム・ジュメイラ

不動産開発によりドバイのブランディングを進める「海のナキール、陸のエマール」。ナキールもエマールも政府系のデベロッパーです。まずは、「海のナキール」からその代表プロジェクトをみてみます。 ドバイの都市開発に世界が注目するきっかけの1つ、パー…

ドバイ開墾(4) : ニュードバイ

古いドバイから新しいドバイ(ニュードバイと言われる)への転換点はどこにあるのか? 1つの手がかりが、100Dh紙幣に印刷されているワールドトレードセンターです。1971年にイギリスの保護を離れ独立したUAE。1970年代当時まだ市街地のフリンジに位置していた…

ドバイ開墾(3) : 自由と寛容

リチャードフロリダが近年の経済発展のための主要要素「3T」の1つにあげている寛容(tolerance)。これがないと国際都市失格です。 ドバイは自由寛容都市でした。 厳しくいえば、出稼ぎ労働者の環境の過酷さや、王族支配の民主的でない面についてたくさん書か…

ドバイ開墾(2) : 砂漠の中の21世紀実験都市

世界一高いブルジュ・ハリファの外壁にしがみついて格闘するトムクルーズの目に砂嵐が確認され、それはやがてそこにも到達。地上へと場所を移した敵の追跡を困難なものに、、、。これは、映画「ミッション・インポシブル」(4作目。2011)のワンシーンです。 …

ドバイ開墾(1):世界の要

これまでのどの都市ともそのつくられかたが異なる世界都市ドバイ。 その不思議な世界がずいぶん前から気になり、「ドバイ」と名のつく図書や論文をいくらか集めたものの、読まずに積んでありました。本ブログではじめて「ドバイ」というキーワードが出てくる…