自由が丘スイーツ物語 ケーキで人を幸せにする街

生活史研究家の阿古真理著、NTT出版2011.10刊。
いつも何かの発見が楽しみな自由が丘。この秋、この図書が出版されました。
日本における洋菓子の歴史をベースに、自由が丘という街の形成史を重ねてみせた逸品。都市イノベーション的観点でみても多くの示唆に富んでいます。
2つだけ(内容まではわからないように)紹介すると、まず「第2章 ケーキの近代史」の一節。自由が丘凮月堂(風月堂)の創業者である森林弥太郎の息子泰夫氏は当時の出店理由について「最初は、どこかにお店を出そうかと思って1ヶ月ぐらいあちこち歩いたんだ。なかなかこれという場所がなくて、たまたま自由が丘駅を降りたら、歩いている人がみんな靴をはいているんだよ。当時はまだ……(著者に敬意を表してこのあと省略)」などと。また、「第3章 自由が丘スイーツ 店の物語 03 マックス」では、「これまで東京の喫茶店・カフェがブームになった時期は3回ある」としつつ、それらと震災、敗戦等を関連づけて解釈しています。
これらに自由が丘の大地主さん(K家、O家)の話やスイーツを創作するパティシエの話なども加わり、ストーリーを厚みのあるものにしています。