Inventive City-Regions

副題に「Path Dependence and Creative Knowledge Strategies」とあるとおり、知識産業・創造産業が都市地域でいかに発展するかにつき、経路依存性(path dependency)の観点から比較考察した好著。ASHGATE、2011年刊。
アムステルダムを基点としつつ規模の類似するミュンヘンヘルシンキバルセロナマンチェスターバーミンガム、ライプチッヒを同じ方法・フォーマットで比較考察しています。
テーマは本ブログ8/23の記事(Urban Studies特集号2009.5号)と似ていますが、①都市の中心部のみならずこのテーマを都市地域(City-Region)スケールでとらえ、住宅需給の整合の観点や地域内外のアクセス性など、地域経済の発展(と衰退)の観点から総合的にみている点、②巨大都市や小さすぎる都市をはずすことで、類似した都市間の共通点と相違点を比較考察することが可能となり新たな知見を得ている点、③同じ方法・フォーマットで7つの都市を比較考察することで同様に新たな知見を得ている点、④なによりも「経路依存性」の観点から地域の発展を進化論的にみている点が特長といえます。さらに、⑤結論において、7つの都市地域に対する今後の課題を導いている点も好感できます。
ただし「経路依存性」に依存しすぎると「それぞれの都市地域はそれぞれなんだね」といった結論しか得られず、若干物足りない結果となりがちな点が心配されます。本書も最初読み始めてみるとそうした感が強くなり2週間ほど放置してあったのですが、マンチェスターアムステルダムバルセロナ、ライプチッヒと読み進めていくとそれぞれがそれなりに面白く(特に上記①の特長は②③の仕掛けにより他にない分析結果をもたらしている)、また、「それぞれの都市地域はそれぞれなんだね」ではなく、「都市地域ABCとDEFとGはこの点が違うのが重要」といった結論も得られていることがわかってきました(⑤がそういう結果)。