PLANNING WITH COMPLEXITY

Judith E. INNESら著、ROUTLEDGE、2010年刊。
著者が長年手がけてきた「collaborative planning」の現時点における進化地点を描いた注目の図書。新宿紀伊国屋書店では「都市計画」の棚ではなく、「政治」の棚に収まっていました。
ステークホルダーが対等の立場で熟議を通して計画を進めていくべきとの立場から実践と理論化を積み重ねている著者ですが、本書では、複雑系(complexity)や不確実性(uncertainty)といった社会の変化がより強調されているようにみえます。そのような社会では将来を「計画」することが難しくなるため「collaborative planning」の合理性がますます高まり、実際、公式の計画の場面においてもその成果を取り入れるケースが増えてきている、という論旨が基本になっています。
また、そのような時代の政府(government)の役割は自ら計画し自ら実行するといった従来型の方法ではなく、メタ・ガバナンス(複雑系と多元性をマネジメントすること)を行うことにあり、そうすることで時代の変化や想定外の出来事にも対応できるしなやかな政府(resilient government)となるであろう、と終章で強調しています。
「Beyond collaboration」と名づけられたこの終章。著者がcollaborationそのもののみならず、それが成り立つ条件やそれらを取り巻くシステムとしての計画の理論を本格的に論じる地点に達したことを告げていると感じました。