限界集落株式会社

黒野伸一著、小学館、2011.11刊。
話の舞台は合併で幕悦町に併合された止村(とどめむら)。若者が流出し廃村の危機が迫るその村に、この村出身で現在は六本木に居を構え企業再生金融業でめきめきと実績をあげる、とある青年(多岐川優)が戻ってくることからこの話ははじまる。あとはタイトルが物語るとおりの展開です。
株式会社としての経営内容もそれなりにできていて面白いのですが、人材発掘・活用のコツ、「よそ者」や行政との関係、モノづくりと営業・広報、総体としての止村の魅力などがバランス良く描かれています。「コンパクトシティ」なる用語も使われていて、単なるフィクションというよりノンフィクション的な要素も盛りだくさん。さらに、成功話というより「中間報告」的であるところも本書の魅力。失敗に続く失敗、しかしその失敗の中から教訓を学び取っていく主人公たちの姿勢に共感でき、その一瞬、「もしかするとこういう風にがんばれば自分でも(自分の街も/自分の会社も)、、、」との希望が湧いてくる一冊です。