幸福の研究 ハーバード元学長が教える幸福な社会

原題は「The Politics of Happiness」。副題は「What Government Can Learn from the New Research on Well-Being」。デレック・ボック著、土屋直樹ら訳、東洋経済新報社、2011.10刊。日本語タイトルがかなり意訳されていますが、内容はというと、原題と日本語タイトルを両方足し合わせた感じです。
成熟社会にかなり入り込んできた日本。GNPに代わる政策目標はないかと、政府も「幸福指標」について研究を進める昨今です。この傾向は世界的なもので、フランスやイギリス、カナダ等でもさかんに研究が行われています。本書はまず、そうした研究成果の全貌を丹念に吟味しつつ明らかにした好著です。ブータンのGNHについても、その成果と課題につき客観的に評価しています。そして「幸福は非常に重要な目標であるが、政府の目標の1つにすぎないというのが適切である」(p73)との「中間まとめ」的な結論にたどりつきます。これが前半。後半では、政策のあり方や教育・研究について多角的な議論が展開、といった構成です。
これだけ体系的かつ綿密にこれまでの成果や政策等への示唆をまとめた本は、これがはじめてでした。格差をめぐる意外な結果も誠意をもって慎重に提示されています。
都市イノベーションの視点からみるとかなり基礎的なものですが重要な図書だと感じました。