2050年の世界地図 迫りくるニュー・ノースの時代

ローレンス・C・スミス(UCLA地理学教授)著、小林由香利訳。NHK出版、2012.3.25発行。
地球温暖化により北極周辺の氷が融けはじめ、北緯45度以北の「ニュー・ノース」で生活できる条件が向上しはじめている。ここには今まで手付かずの資源が眠っているし、水も豊富だ、、、
と、科学的データを積み上げて語られる本書は、これまで統合的にあまり考えられてこなかった地球上の諸地域の諸課題解決の道の1つを、「ニュー・ノース」に着目して探ろうとする意欲作です。楽観的シナリオによっても避けられないと予測される地球の北方の温暖化による影響と可能性をリアルに描いた作品です。
アイスランドグリーンランドノルウェースウェーデンフィンランド、ロシア、カナダ、アメリカといった、「北のはじっこの方の」諸地域が主役です。拠点となりそうな都市として、トロントモントリオールバンクーバー、シアトル、カルガリーエドモントンミネアポリス-セントポール圏、オタワ、レイキャビクコペンハーゲンオスロストックホルムヘルシンキサンクトペテルブルク、モスクワなどのハブは「現在急速に発展しており、外国から多くの移民を引きつけている」。より小さな移住先として、アンカレジ、ウィニペグ、サスカトゥーン、ケベック市、ハミルトン、イェーテボリトロンハイム、オウル、ノボシビルスクウラジオストクなどがあるとされます。ここまではだいたい「聞いたことがある」都市群ですが、「本当の意味で北にある」発展の可能性がある町として、フェアバンクス、ホワイトホース、イエローナイフ、フォートマクマレー、イカルイト、トロムセ、ロバニエミ、ムルマンスク、スルグート、ノビウレンゴイ、ノヤブリスク、ヤクーツクなどが、活動拠点となる港としてアルハンゲリスクチャーチル、ドゥディンカ、ハンメルフェスト、ヒルケネス、ヌーク、ブルドーベイがあげられています。
少しずつ融け始めている永久凍土の上の交通は可能か、先住民とはどうやって共存できるか、どのような発展の可能性があるかなどを、1つずつ丹念に考察していく姿勢に共感でき、また、わくわくさせられる図書です。