International Perspectives on Suburbanization:A Post-Suburban World?

Nicholas A. Phelps and Fulong Wu編、Palgrave Macmillan、2011刊。
これまで、「中心部−郊外部」という枠組みを前提として「郊外化(suburbanization)」をとらえてきたことに対して、最近のアーバニズムがそうしたとらえ方だけでは説明できないのではないか、「Post-Suburban World」ともいうべき新たな枠組みや見方が必要になっているのではないか、との問題意識から、グローバルな視点で現代都市のアーバニズムをとらえ直そうとする野心作。
扱われている都市はアメリカやカナダ、南米、西欧、中欧、ロシア(モスクワ郊外)、日本を含むアジア、オーストラリアにまたがります。
「A Post-Suburban World?」の「A」と「?」が重要で、都市によって「Post-Suburban World」のありさまは様々。たいへんおもしろい内容です。
たとえば、「Post-suburban Tokyo?」とのタイトルがつけられたアンドレソーレンセン先生の論説は、思わず苦笑しつつ「なるほど」とうならされる内容。たいへんテンポ良く、しかもかなり踏み込んだレベルで、さらには理論的解釈も含めて論じていて、これはすごいと思わされます。少しだけ内容にふれると、そもそも首都圏のスプロールは地主の土地所有とその売買の動機、制度的不備(緩さ)等の理由で日本独特の形で進行したものであり、そのような拡散的市街地をかかえたまま、今度は近年の人口減少と高齢化のなかで、都心部に人々が逆戻りするreurbanizationが起こっている、というものです。このreurbanizationの動きはたとえば欧米先進国でみられるgentrificationとは異なるとするなど、国際比較するための数々の論点を含んでいます。また、人口が減少する日本の状況には第14章の編著者による表現ではdisurbanizationという言葉があてられています。
そのほかにも、排他的ゾーニングを特徴としてきたアメリカの郊外部が、都市を「都市地域」としてとらえる近年の変化とも関連して「post-suburban regionalism」ともいうべき再編の動きをしている(ケースとして、ロサンゼルス郊外とボストン郊外の動きが紹介されている)、とする論説もあり、たいへん注目されます。