琵琶湖疏水(京都と都市イノベーション(その1))

平清盛』で低調だった視聴率を取り戻したNHK『八重の桜』で、会津藩が京都守護のため三条大橋を渡り幕末の不穏な空気に包まれる京に入りました。1862年のことです。戊辰戦争後、首都機能が東京に移動し衰退した京都の再生・近代化を担ったこの琵琶湖疏水。その都市イノベーションプロジェクトとしてのハイブリッドさに惹かれて第84話とします。
なにせ、飲料水、農業用水、工業用水に利用されたばかりでなく、落差を利用した水力発電により日本最初の電気鉄道(京都電気鉄道)を可能に。並行してその電気でインクライン(船を乗せるケーブルカー)を動かし舟運による琵琶湖までの行き来を可能にし、京都市内に電気も供給しています。その水はさらに防火用にも活用されたとのこと。
事業資金の調達方法もイノベーティブです。当初60万円の予算だったものが、「ちゃんとしたものをつくろう」ということになり125万円2579円の工事費に。補助金や市公債だけでは足りず、特別に京都の人々に目的税を課しています(26万7801円)。
最後に、この事業を担った大学を卒業したばかりの田邉朔郎21才。特に、当時としては最長のトンネルで「多くの人々がその完成を疑った」(『琵琶湖疏水京都市上下水道局p6)といわれる第1トンネル2436メートルを完成させるなど、そのチャレンジ精神には目を見張るものがあります。
これに関連して、第74話の『THE EVOLUTION OF GREAT WORLD CITIES』に出てくるエリー運河を思い出しました(第4章)。五大湖からニューヨークを直接結ぶこの運河の開通によりアメリカの中心はフィラデルフィアからニューヨークに移動。
インフラ1つで都市の運命も左右されるとなると、現在の日本に真に必要とされる都市イノベーションプロジェクトは何かを真剣に考えるべきだと思わされます。