災害復興の日本史

安田政彦著、吉川弘文館(歴史文化ライブラリー361)、2013.2.1刊。
「いつの時代にも災害からの復興は容易ではなかった」が、「どれほどの激甚な災害が起ころうとも、人々は懸命の努力をもって復興を果たしてきた」(プロローグより)との視点から、淡々と災害復興の歴史を綴った図書。まずはこのようなテーマで図書としてまとめられたことに敬意を表したいと思います。
国連大学資料によると、自然災害の被災の可能性指標は日本は世界で5番目(バヌアツ、トンガ、フィリピン、コスタリカに次ぐ。グァテマラ、ソロモン諸島ブルネイエルサルバドル、チリが続く)。小さな列島で不安を抱えながら暮らす私たちの姿が見えてきます。ただし、「災害に対する脆弱性」は他の主要国並みとなっていることから、不安ながらも一生懸命それを克服するべく工夫・努力してきた成果はあったとみることはできそうです。
この書に記載されている災害を、「地震津波」「風水害」「旱魃・飢饉・疫病」「噴火」「火災」別に巻末の一覧表をもとに数えると、平安時代以前(9、15、16、3、5)、鎌倉・室町時代(7、8、7、0、9)、江戸時代(7、1、3、3、11)、明治以降(6、0、0、0、0)の、合計(29、24、26、6、25)です。特に明治以降は代表的な地震津波のみが取り上げられているため数字上の意味はまったくありませんが、災害の多様さと多さがわかります。
『大災害の経済学』(林敏彦著、PHP新書750、2011.9.1刊)によれば、各災害の直接被害額の対GDP比は、関東大震災35.3%、阪神・淡路大震災2.1%、東日本大震災6.8%(34兆円)とされます(p245)。関東大震災の傷の深さがわかります。最近しばらくGDPは毎年500兆円ほどのため、首都直下地震の被害推計112兆はGDP比22%ほど。これでもたいへんですが、南海トラフ巨大地震では1000兆円に達するとの声もあり、それはGDP比200%と気が遠くなりそうな額です(既に国と地方の借金がGDP比200%ほどに膨れ上がっている)。
このような不安を抱えながらも「一生懸命それを克服するべく工夫・努力してきた成果はあった」ことが何だったかを改めて吟味する材料を提供してくれる図書なのだと思います。
昨日届いた『建築雑誌』2013.03号の特集(「近代復興」再考:これからの復興のために)を合わせ読むと(特に、吉川仁「被災後対応の歴史に学ぶ−災害対策の新しい枠組みに向けて」(p18〜21))、復興そのもののあり方を考える手がかりが豊富に得られます。感謝。