WORLDING CITIES

Ananya Roy and Aihwa Ong編著、WILEY-BLACKWELL、2011刊。第93話です。
サスキア・サッセンの世界都市論とも違い、マイク・デイヴィスの『スラムの惑星』(⇒第8話)のようなとらえ方とは一線を画し、リチャード・フロリダ(⇒第2話)のクリエイティブ・クラス論のような方法・内容とは(とりあえずは)まるで違う、もしかするとまったく新しい世界都市論かもしれません。いや、厳密にいうと、「世界都市論」というとらえかた自体を疑い、現実に起こっている事実そのものを冷静に分析して、worldingという言葉を新たに与えて理論化に取り組んだ先端的かつ挑戦的な図書です。
副題の「Asian Experiments and the Art of Being Global」にあるように、「 Art of Being Global」そのものをとらえようとしたのが本書の最大の特徴です。あえて訳すとそれは「グローバルであることの術策」といった感じでしょうか。そのような術策によって、今日のアジア大都市は世界都市化のウマミを得ようとあちこちで新たなうねりをつくっているというのが「worlding cities」のとりあえずの意味・内容です。
「Modeling」「Inter-Referencing」「New Solidarities」の3部構成。モデリングでは、アジアで世界都市化に成功しているシンガポールの分析からスタートし、それがモデルとして大連(中国)やバンガロール(インド)に参照されていくさまが描かれます。グリーン・アーバニズムを論じた第2章ではハワードの『田園都市論』までさかのぼり、新たな観点からモデルとしての意味を解読していきます。これだけなら「よくある話だね」オシマイ、となりそうな雰囲気ですが、インドのバンガロールコルカタ、デリーを扱った第3部「New Solidarities」は圧巻というか壮絶。特に第11章のデリーのスラム撤去をめぐるストーリーはまさに「 Art of Being Global」の象徴といえる内容でした。