Urban Design in the Real Estate Development Process

Steve Tiesdell & David Adams編著、WILEY-BLACKWELL、2011刊。
都市空間を豊かにするためには、現実にその空間の多くをつくっているディベロッパーのビジネススタイルを理解しつつ、都市デザインが可能な領域や方法をしっかりと見出すことがなによりも大切と考える英米系の専門家らによる論考集。地味な内容ですが、こうした実務的な調査研究の積み上げのなかから、都市イノベーションの技術や主体が形成されてくるのだと思い注目しています。
14章構成。第1章の序章において、「Site」「Regulation」「Market」の三角形ののなかで、デザイナーにとっての機会領域(opportunity space)とデッベロッパーにとっての機会領域が示されます。「機会領域」というのは、その領域で工夫することでwin-winの関係が築ける可能性がある範囲のこと。2章から13章ではさまざまな技術(マスタープラン/ゾーニング/コード/敷地分割)、方法(交渉/デザインチャンピョン)、側面(ディベロッパーの実態調査/再開発)から機会領域の可能性が探られていきます。
参考文献や事例も豊富で、こうした課題にどう切り込めばよいかのヒントが得られます。
思えば、編著者の1人のAdams教授による『Urban Planning and the Development Process』(UCL Press 1994刊)は、今でも色褪せないイノベイティブな内容です。なかでも第10章の「The power to influence local development planning」は地元住民の意見をできるだけまとめて対案を示せば計画に取り入れられる度合が高まることを実証した研究成果でした。2011年の本書ではこうした住民色は薄れていますが、Development Processに取り組む点で一貫していて、なぜかこういう図書に発展していることをとてもうれしく思いました。