“ヘーゼルタイン・レビュー”と新しい地域政策

労働党政権が創設した地域開発公社(RDA)が廃止されるなど、「地域(region)」レベルのさまざまな仕組みを廃止してきた現キャメロン政権。
2012年10月に公表された“ヘーゼルタイン・レビュー”(正式名称は『NO STONE UNTURNED』=資料1)では、LEP(Local Enterprise Partnership)を地域の経済開発の中心に据えつつ、そのガバナンスを強化して戦略計画をつくらせ、EUの資金も含めた国内外の開発資金をそこに流し込むことを見据えた大胆な勧告を行いました。
それを受けた2013年3月18日の政府の方針(=資料2)では、ヘーゼルタイン氏の勧告を概ね受け入れるとしています。
大きな社会(Big Society)とローカリズム法(Localism Act)をキーに新政権の都市政策・都市計画・地域計画をこれまで2年間ウォッチしてきましたが、“ヘーゼルタイン・レビュー”をきっかけとして、「近隣」−「都市」−「地域」を結ぶ全体の道具立てがさらに明確になってきたとするのがRTPIの「Article and Opinions」欄に6月3日に掲載されたモルフェット氏の論説(=資料3)。ここでは、EUの動向も踏まえて2015年にはこのような新しい政策体系に移行するであろうと展望しています。

政権が代わるとガラッと政策も変わる英国(とりあえずイングランドの話)。「大きな政府」から「小さな政府」という意味では今回もそのように読めるのですが(従って「次」はまたその逆になるはず)、「ローカリズム」という新しい要素を歴史的にどうとらえるのか(⇒2011.8.11記事のP.Allmendinger教授らによる4つの観点がとりあえずの評価ポイントか)。試行錯誤がしばらく続きそうです。

【資料1】https://www.gov.uk/government/publications/no-stone-unturned-in-pursuit-of-growth%20
【資料2】https://www.gov.uk/government/publications/governments-response-to-the-heseltine-review-into-economic-growth%20
【資料3】http://www.rtpi.org.uk/briefing-room/articles-and-opinions/new-strategic-planning-in-england/

[参考]本ブログのイギリス最新都市計画「★統合ファイル