未来のイノベーターはどう育つのか

トニー・ワグナー著(藤原朝子訳)、英治出版2014.5.15刊。
「エンジニア、起業家、デザイナー、社会起業家、彼らの両親、グーグルやアップルなど独創的な企業の人材開発担当者、MITやスタンフォードの教育者……大勢の人に取材を重ね、家庭環境から大学教育、企業文化まで俯瞰して見えてきた「イノベーション能力」の源泉とは?」との解説によるこの本。気にはなっていたものの実際に手にしたのは昨日の朝日新聞に掲載された書評(タイトルは「知識を応用する能力こそ」。評者は梶山寿子(ジャーナリスト))に刺激されてからでした。
インタビューした150名を超えるイノベーター。「その範囲が広く複雑だったため分析は困難を極めた」。「そこで本書で紹介するイノベーターは、21〜32才で、いわゆるSTEM分野(科学、技術、工学、数学)で飛び抜けて独創的な仕事をしている人か、社会イノベーションや起業に関わっている若者に絞った」とされます。分析内容は家庭での教育方針から大学カリキュラム、企業内での人材開発までおよびますが、たとえばSTEM分野の5人のストーリーはとても具体的で、特徴ある大学カリキュラムや理解ある教員やメンターの重要性が強調されていました。とはいえ、そうした教育をしている教員は教育専門のスタッフであったり、そもそも傑出したイノベーターの多くが大学を中退していることなど、大学とはどういう場所なのかを考えさせられる内容でもあります。
副題に「子供の可能性を伸ばすもの・つぶすもの」(原題は主題がCreating Innovators。副題がThe Making of Young People Who Will Change the World)とあるように、本書が独自なのは、子ども時代の育てられ方とも関連づけながらイノベーターの成長を読み解こうとしている点にあります。インタビューが150名を超え「分析は困難を極めた」ためSTEM分野5名と社会イノベーション分野3名だけの物語となっている本書。さらに分析された次の結果も読みたくなりました。

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