ロングテール

クリス・アンダーソン著、文庫版2014.5.25刊。2006年に発表され2009年に日本語訳。
「生産手段の民主化」でテールが伸び、「流通手段の民主化」でニッチの購買が増え、「需要と供給の一致」によりヒットからニッチへとビジネスが移行することで、“「売れない商品」を宝の山に変える”ロングテールという新戦略。なかなか刺激的で今なお新鮮です。
その後発表された『MAKERS』(2012)は本書の応用編・実践編であることに気づきました。
『MAKERS』が応用編であるということは、ロングテールのアイデアはまたまだ他にもたくさんありそうで、このことを考えるだけでワクワクします。たとえば昨日終わったウインブルドンテニスは狭い世界のヒットをグローバル化することでヘッドが持ち上がり、本日ロンドンがゴールとなるツールドフランスもウイリアム王子もかけつける一大ワールドイベントとなり、衛星放送により世界に中継されることで活気づいたプレミアリーグ(1992年発足)は既得権(放映権)や「外国人枠」の撤廃とからんでいました。これら3つはヘッドを持ち上げたことでロングテールがさらにロングになった例だと思います。
『MAKERS』が実践編であるということは筆者がそのメイカーズになって体験を深めていることを意味し、次作をみるのがますます楽しみになります。
明確に都市とロングテールの関係を述べているのは228〜230頁の約2頁分にすぎませんが、世界の魅力あるあらゆる都市の情報が伝わることは、都市の世界がロングテール化していることを意味し、まだまだ「わかっていない」ことがたくさんあることで、また、「新しく生まれている」こともそれ以上にあると想像できることで、そのこと自体が都市イノベーションといえるのだと思います。

[関連記事]
・「MAKERS 21世紀の産業革命が始まる」(都市イノベーション読本 第70話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20121120/1353375098
・「創造的破壊 グローバル文化経済学とコンテンツ産業」(都市イノベーション読本 第11話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20110830/1314706821