じゅうぶん豊かで、貧しい社会

なんともシニカルで放ってもおけないタイトルのため、即買即読。スキデルスキー親子著、村井章子訳、筑摩書房、2014.9.1刊。原題は、HOW MUCH IS ENOUGH?。発行は2年ほど前。英語圏では既に話題になった図書のようです。日本語副題は、「理念なき資本主義の末路」。
十分豊かと思われる国でも、なぜ人々はあくせくと働くのか?いったい何が私たちの本当の目標なのかを問い詰めていくスタイルの図書です。
リーマンショック後の「脱成長」路線とは一応異なり、幸福度やサステイナビリティ論のような単一価値路線は脇に追いやり、前近代にまでさかのぼって現代の規範とすべき要素をひろいあげて、「よい暮らし」を目標としつつそれを形成するための7つの要素をまとめています。
考察は滑稽と思えるほど純朴で、抽出された7つの目標もかなり一般的。その実現のための方策も、ワークシェアリングベーシックインカム等のかなり現実的なものばかりです。しかし、現在のネオリベラリズムの限界を親子で超えようとする姿に共感でき、反論や疑問点につき論理的に1つ1つ自問しながら解決に至ろうとする真摯さには敬意を表したいと思います。