地球進化46億年の物語

8月1日の「生物に学ぶイノベーション 進化38億年の超技術」のさらにおおもとにさかのぼる壮大な物語。あえていえば前回は「生物の進化形である私たちはおおいに生物から地球環境と共生する知恵を学びましょう」といった内容だったとすると、今回は「生きている地球があるからこそ何度も生物が絶滅したかにみえてもまた別の進化形で生物があらわれる。そのような意味で生物は地球の一部である。したがって私たちも地球の一部である」。生態系の枠をさらに超えて、地球自体が生態であり、分子や原子、鉱物や植物・生物の「共進化」を一元的・体系的・連続的・科学的に論じた最新の研究成果となっています。ブルーバックス1865、講談社、2014.5.20刊。著者はロバート・ヘイゼン。
終章では、超長期的にはアメリカ大陸は太平洋が縮んで日本に衝突するばかりか全大陸がまた1つになる(地球の最初の頃は別の形で1つだった)、といった2億5000万年後の様子が語られ、5000万年後、100万年後、10万年後のあとの5万年後の話の中では、海面が60mほど低くなりボストンからマイアミに至るすべての都市が内陸都市になる可能性や、今後1000年以内に海面が30m以上あがってボストンもニューヨークもフィラデルフィアも水没し、オランダやバングラディシュやモルディブなどは国自体がなくなっているかもしれないと述べ(モルディブについては⇒2014.8.25記事)、現在にちかづいてきます。そしてこれからの100年間。「私たちが行動を起こすのは、“地球を救う”ためでは決してない。45億年以上、激しい変化の中を生き続けてきた地球を、私たちが救う必要などない」「もし地球の行く末を心配するのであれば、それは何より人間という種のためであるべきだ」との言葉に、他にはない凄みを感じざるを得ません。
宇宙のことも人間のこともまだまだわからないことばかり。1つ前の記事(歴史・経済・倫理・哲学)もそうですが、わからないことがわかる発見や、わからなかったことがうまく統合的にわかる喜びが、イノベーションの原点なのかもしれません。