(ミニ特集)近隣計画の運用(その1) パリッシュ評議会による場合

Localism Actにより導入された近隣計画では、策定主体に注目した場合、大きく分けて、1)タウン評議会またはパリッシュ評議会によるもの、2)近隣フォーラムによるもの、の2タイプがあります。また、策定方法にも大きく分けると2タイプがありますが、ここでは一般的に使われているneighbourhood development planによる近隣計画を簡単にレビューします。
最初に採択されたUpper Edenは1)のうちパリッシュ評議会(連合体)によるもの(その1)、2番目のThameは1)のうちタウン評議会によるもの(その2)、3番目に採択されたSt Jamesは近隣フォーラムによるものです(その3)。これらは1年半以上の運用実績があります。さらに運用の期間は1年ほどしかありませんがロンドンではじめての近隣計画となったNorlandをとりあげます(その4)。これは近隣フォーラムによる事例の1つですが、既に存在していたNorland Conservation Societyが近隣環境の保全のために近隣計画を利用した興味深い事例です。
たった4事例では一般的傾向はつかめませんが、近隣計画の内容や運用の多様性とともに共通の特徴も垣間見られたらと思います。(その5)として知見を整理します。

第1号となったUpper Eden近隣計画は、2013年4月11日に採択されました。
この近隣計画は17のパリッシュを合わせた計画範囲とし、この自治体(Eden District Council)の5分の1ほどを占めています。中心都市からかなり離れた田園地域という特性から、一般的な田園地域を想定した現行の政策では小さな集落の持続性を維持することができません。この自治体のディベロップメントプランではこのあたりのことについて細かくは規定していないため、共通課題をもつUpper Edenエリアの課題・特性に即して近隣計画を定め、特に個々の計画許可の際に、きめ細かな運用ができるよう工夫したのがこの近隣計画の内容です。
政策は7項目あります。それが必要であることが示され周囲に悪影響を与えるものでなければアフォーダブル住宅を例外的に1戸から許容すること、ビジネス用途も同様に広く許容することなどです。6番目の政策では開発速度をパリッシュごとにモニタリングする(できれば過度な開発を抑制する)としています。
このように、「近隣計画」とはいえ、計画許可基準をこの近隣の特性と課題に即して、自治体全体の基準ではカバーできない部分をきめ細かく定めることを主眼とした計画内容といえます。
こうした計画内容の場合、「近隣計画の運用」の実態を把握するのは難しいことが予想されます。もともとパリッシュが17も集まって策定した計画のため、運用主体が誰かを特定してもその意思を明確にするのも難しいかもしれません。むしろこうした計画は、Edenという自治体の部分計画ととらえたほうがよいかもしれません。
もし、特定のパリッシュが自分たちの集落のために策定した近隣計画であれば運営主体も明確であり運営の意思さえあれば何らかの成果が明確にあがっているかもしれません。(その2)ではそうした近隣計画が紹介できると思います。