(ミニ特集)近隣計画の運用(その5) 小さな総括

4つの近隣計画の内容とその実現方法について、計画策定後1年から2年の段階で、なるべく性格の異なるものを通してみてきました。いくつか興味深い点や、今後注目したい点を3つだけあげます。
第一。近隣計画の策定主体。特にパリッシュという最もローカルな民主的運営主体について。概念としてはシビル・パリッシュという上位の組織体のひとつがパリッシュ・カウンシル。そのうちタウンを運営するのがタウン・カウンシル。都市を運営するのがシティ・カウンシルのようです。一方の「フォーラム」の方も2事例みただけですが、さまざまなものがありそうです。
特にイギリスでも日本でも合併の結果大きな自治体が都市計画を行うようになり、本当はさまざまな特性と個性をもつ地域があるはずなのに都市マスタープランや都市計画法制ではなかなか細かなところまで手が回りません。しかし、近隣計画というツールをもつことで、地域を運営する主体が自らの集落やタウンや地区のまちづくりができることになったことはとても大きな改革であり、その担い手についてもっと知りたいと思います。ビジネス近隣フォーラムの事例がこれから出てくると、ますますこのあたりが面白くなります。
第二。近隣計画のタイプと内容の多様性。今回のミニ特集では計画主体を軸に4つの事例をみてきましたが、実は、これらはすべてneighbourhood development planを使った近隣計画です。制度的にはもう1つ、neighbourhood development orderや、その特殊形といえるcommunity right to build orderによる事例も既に出てきています。これだけ出てくると、これらを複合的に用いるものもありそうです。また、近隣計画という計画書自体の構成もさまざまで、ある意味、これといった形式がないようにもみえます。むしろ、近隣計画を用いて何を達成したいかをそれぞれに考え、その効果の限界も見越しつつ、あえて「ここまでがんばろう」という近隣の共通意思を示す(もちろん願望だけではなくそこにはさまざまな技術や裏付けを伴う)ツールのようにみえます。
第三。近隣計画そのものと、Localism Actで導入された他のツール、あるいは近年のイギリス都市計画全般の動向との兼ね合いにおける近隣計画の役割の可能性。近隣計画は実はLocalism Actの1つの要素にすぎないため、本ブログでも紹介しているACVなども組み合わせて使うと、地域レベルのまちづくりをさらに豊富にすることが可能です。また、(その4)のNorlandの近隣計画で示されていたように、CILを財源として使うことがこれから可能になってきます。こうして「攻め」のツールを使う方向がある一方で、保全地区で認められる開発の幅の拡大に対処するなどの「守り」を固めることも必要になっているようです。

少し前に「30」を超えた近隣計画は「40」を超えつつあります。その背景には1000を超える取り組み地区があることを考えると、近隣計画からますます目が離せません。

[参考]「ACV」「CIL」についてはLocalism and Planning統合ファイル(「■コミュニティの権利と近隣計画」欄)参照。