近隣計画の運用(その6) 要素を複合化した近隣計画事例:Ferringの場合

昨日の(その5)で「複合的な」近隣計画例が出てきていると書きましたが、neighbourhood development planとcommunity right to build orderを組み合わせたFerring近隣計画を紹介します。
Ferringパリッシュは、日本人にもおなじみの保養地ブライトンから西に20キロほどいった海岸べりの小さな町です。この一体はArun District Councilという自治体になっていて、これまで40ほど策定された近隣計画のうち10がこの自治体のものです。Ferringパリッシュ評議会はこの自治体の1パリッシュなのですが、このパリッシュだけで4つの近隣計画がレファレンダムを通過しました(2014.12.10)。うち1つがneighbourhood development plan、残り3つがcommunity right to build orderです。そしてこの3つのcommunity right to build orderはneighbourhood development planを実現するための重要な要素として有機的に練られたものであることがわかってきましした。概要は以下のとおりです。

ブライトンもそうですが、ロンドン郊外の海辺の街は人気が高く、開発プレッシャーが強くなっています。ややもするとパリッシュにとって不本意な大型の住宅開発が周囲の自然環境をつぶして、あいるは町中の大きな敷地にドカンと行われてしまうので、そのようになるのを防ぎつつ、逆に、地元ニーズを踏まえた小規模分散型の住宅開発に誘導できないかと考えたものです。地元ニーズでは特に高齢者用の小規模な住戸が不足していること、community right to build orderを使ってそのような住宅を建てようといっても土地のコントロールができる公有地的な場所が必要であることを踏まえて、「1」「2」「3」の3つの敷地を関連づけながらこの仕組みを使うことになりました。いずれもインフィルタイプの敷地で、現在パリッシュが所有する市民菜園0.34haに14戸の1or2ベッドルーム型住宅を開発(「1」)。小規模なビレッジホールが建っている別敷地0.12haをクリアランスして1ベッドルーム型住宅を10戸供給(「2」)します。いずれも市場に出すことで資金を稼ぎ、その資金を使って今度は0.29haの「3」の敷地をその関係者も巻き込みながら再利用してコミュニティセンターを建設するというスキームです。これらを10年以内に行うというのがorderの内容。自前でこれらの建設をコントロールしつつ許可も得られるという意味でcommunity right to buildとの名称がつけられているようです。
なかなかイノベイティブかつ現実的です。是非、この行方を見届けたいと思います。

[関連サイト]
・Ferring Parish(近隣計画のページ)
http://ferring.arun.gov.uk/main.cfm?type=NEIGHBOURHOODPLAN
・Arun District Council(近隣計画のページ)
http://www.arun.gov.uk/main.cfm?type=NEIGHBOURHOODPLANS