the duty to cooperate

近隣計画第8号と第9号はいずれもノリッジの市街地縁辺部にあり、それらには大規模な土地利用転換が都市計画で位置づけられています。しかしノリッジ市にはその縁辺部は含まれず、イメージでいうと、ドーナッツの真ん中の穴がノリッジ市、上半分と下半分がそれぞれ別の自治体になっていて、第8号は下半分に、第9号は上半分に属しています。このような場合、どうやって都市圏全体の計画の整合性をはかるのでしょうか?
Localism Actでは広域の都市計画システムを廃止したかわりに「duty to cooperate」という規定を新設しました。これまでその実態がよくわからなかったのですが、近隣計画第8号と第9号を理解するために、ドーナッツの穴(ノリッジ市)とドーナッツをくっつけたノリッジ都市圏の都市計画を理解していくと「duty to cooperate」の実態がわかってきたので、まずはこの記事で「duty to cooperate」を整理。そのあと、近隣計画第8号、第9号という順番でとりあげていきます。

Localism Actの第6部が「都市計画」です。その最初の第109条が地域戦略の廃止の規定。続く110条が「duty to cooperate」となっています。109条で戦略計画を廃止するので、いわばその穴埋めとして、各自治体が戦略的計画を立案する等の場合には周囲の自治体と協議するなどして合理的なものとしなければならないというのが「duty to cooperate」の内容です。

条文を読んでもよくわからないので、ここではノリッジ市がDevelopment Planの一部を策定する際にどのように「duty to cooperate」に従ったかを示した図書を見てみます。図書のタイトルは「Statement of Compliance with the Duty to Cooperate in relation to Planning for Sustainable Development」。25頁構成です。国の方針をいかに踏まえているかの説明に続いて、特に都市圏レベルの戦略方針「Greater Norwich Joint Core Strategy」づくりでいかに周辺自治体等と協力したかが説明されています。そのあとには、これまでの都市圏レベルでの計画づくりや調査における協力の歴史がリスト形式で整理され、現在この計画づくりの過程で関連機関とどのような協力をしているかのリストが最後についています。

逆にいうと、政府はLocalism Act 110条を使って、「duty to cooperate」を果たすべき計画等が適正に策定されたかをチェックすることができ、適正でないものは計画書として採択できないため、書き換え作業が行われます。

理屈のうえでは、上位の戦略的計画やそれを運用する主体を廃止しても、このようにして各自治体が何かをしようとするたびに周囲と協調・調整していれば広域の課題にも対処できるといえなくもないのですが、果たしてこの仕組みはうまく機能するのでしょうか。
大きくみると、労働党が残した「大きな地域」は金がかかるばかりかその効果も疑わしいとの考えからそれを廃止し、逆に、基礎自治体を強化しつつ(⇒general power of competence)、さらに近隣コミュニティの力を発揮しやすくすることで「Big Society」を実現しようとしているのが現政権です。広域的・戦略的課題については「上から配分」する方法ではなく、さまざまな(自分にとって都合のよい)仕組みを下から強化・構築しそこに権限や資金を流し込むことでその力を利用して成長を促そうとしているわけです。
これは、上から配分がよいのか、下から構築がよいのかという二者択一の課題というより、リーマンショック後に国民が選んだのが現政権であり、それがうまく機能すれば継続するし、そうでなければ現実的に修正していく、という現実的選択の問題といえそうです。