ATLAS OF CITIES

円安や観光政策などの要因をとりあえず横に置いておき、あるいは近くにあるからといった地理的要因もここではとりあえず横に置いておくとすると、例えば「東京に何を期待して外国人はやってくるのか?」、ロンドンやニューヨークやイスタンブールやミラノでなく、「東京」というのはどのようなところなのか?
本書『ATLAS OF CITIES』はそのような興味にこたえてくれる、一見どこにでもありそうな、しかし1つ1つ見ていくとある部分はかなり深く掘り下げている、今までみたことのない地図帳です。都市が多様であることを反映して、本書では世界の都市を13の切り口から解説・考察しています。それぞれの切り口から代表都市(Core city)をあげ、その都市を中心に考察は進みます。
全部あげますので、「Core city」はどこか考えてみてください。
THE FOUNDATIONAL CITY
THE NETWORKED CITY
THE IMPERIAL CITY
THE INDUSTRIAL CITY
THE RATIONAL CITY
THE GLOBAL CITY
THE CELABRITY CITY
THE MEGA CITY
THE INSTANT CITY
THE TRANSNATIONAL CITY
THE CREATIVE CITY
THE GREEN CITY
THE INTELLIGENT CITY

「Core city」とされる都市を上の13カテゴリーに合わせて以下に紹介します。
・Atens and Rome
・Augsburg,London,Venice,Florence,Insbruck,Lubeck,Bruges,Paris,Ghent
・Istanbul
・Manchester
・Paris
・London and New York
・Los Angeles
・Mumbai
・Brasillia
・Maiami
・Milan
・Freiburg
・London

東京(日本の都市)はないですね。少し妥協して「Core city」の次にあげられている「Secondary cities」までひろげるとどうでしょうか。1つだけ出ています。最後の「THE INTELLIGENT CITY」の2番手9都市の1つに「Tokyo」があげられています。「工業技術の発達した日本」的とらえかたです。
なお、1つだけ「Yokohama」が索引レベルで出てきます。ただし「Tokyo-Yokohama」というとらえ方においてです。p143とあるのでめくってみると、「MEGACITY」の最初のページで、2013年時点の大都市圏人口でした。「Tokyo-Yokohama」は37,239,000人と、2番手のジャカルタをはるかに引き離して1番目です。
しかし本書の興味はそうしたランキングではなく、現代都市において、「MEGACITY」の本質的役割は何か、世界的分布等においてどのような傾向が読み取れるか、これからどのように計画・制御できるかなどです。
章ごとに著者が違い欧米大学の地理学者に偏っているので、とりあげられた、あるいは位置づけられた都市に偏りがあるかもしれません。しかしながら、現代都市にこれだけ多面的な切り口を用意してアトラス化したことで、たいへん興味深い内容になっています。今、たまたま開いているページはミラノ都市圏のクリエイティブ産業の分布図です。「Alessi」「Lambretta」「Como」「Bergamo」などの文字や記号を見ていると、ミラノにもいつか行ってみたいと思えてきます。

※『ATLAS OF CITIES』:PAUL KNOX編、Princeton University Press、2014