今朝の朝日新聞書評欄で五十嵐太郎氏が「ついに邦訳された」と紹介している本書をさっそく読んでみました。ちくま学芸文庫、2015.5.10刊。
訳者(兼本書の編集者と思われる)太田佳代子氏が書いているように、本書は元の『S,M,L,XL』から「いろいろ差し引いてもいるので」『S,M,L,XL+』ではなく『S,M,L,XL±』が内容に近く、さらに、内容をシャッフルしているので『S,M,L,XL』とは異なる別物のエッセイ集(副題は「現代都市をめぐるエッセイ」となっている)というべきかもしれません。また、『S,M,L,XL』の発刊は1995年と20年も前であるため、その後起こってきたさまざまな都市現象、たとえば近年はやりのスマートシティに対するエッセイが20年前の「ジェネリック・シティ」論と同居しているなど、論がぼけているきらいもあります。そうした「雑音」等を取り払って議論に耳を傾けると、、、
「アジアに多い」とされるジェネリック・シティ。なかでも1995年時点の議論として今でも興味を引くのは、シンガポールの都市づくりと、その背景に語られている槇文彦の1970年以前の英語で書かれた都市・建築理論です。その理論を語っているのはコールハースなのですが、ジェネリック・シティを議論している本人の横に槇がいて、欧米を基準に議論するレムに向かって、「レムさん。あなたのおっしゃる「ジェネリック」論もわからないではないが、東京(やアジア)では、このような力(槇が論じる鍼療法のような力)がもとから働いてきたととらえるべきではないでしょうか」と言っていて、それがまだ半信半疑なレムにより引用される形で紹介されているようにみえます。
これはたとえば、2つ前の記事『東京150プロジェクト』で語られている「東京のつくりかた」のような(欧米先進国からみれば)途上国的都市づくりは近代都市計画とはみなさないものの見方が前提となっている気がします。
この「都市イノベーション2020」も今回が第90話。以下、今回の議論に関係ありそうな重要な記事を2つあげておきます。
・『Worlding Cities』(都市イノベーション読本 第93話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20130507/1367897544
・『A History of Future Cities』(都市イノベーション読本 第100話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20130625/1372127319
なお、『錯乱のニューヨーク』については、以下の記事(都市イノベーション2020 第59話)で。
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20141108/1415410451
[参考] 「【コンセプトノート】都市イノベーション」(Blog内統合ファイル)は以下のURLで。
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20141110/1415588957