都市イノベーションが生まれるとき

昨日の大学院ゼミで、復興まちづくりのある取組の評価軸について議論になり、たとえば「復興では時間が切迫している」から「本当はこうしたかったのにできなかった」というとらえかたをすべきなのか、「復興では時間が切迫している」のに「特段の都市イノベーション的工夫をして(工夫がかえって可能になり)ここまてできた」ととらえるか、ずいぶん違うねぇ、といった議論がありました。
日本の都市に限らず都市というのは基本的にいつも何らかの切迫した課題をかかえていて、都市イノベーションとは、そのような課題に先進的かつ本質的に取り組み、同様な課題をもつ他の地域にも参考になるような一定程度以上の普遍性をもつ成果といえるかもしれません。ただし、表面的には「同様な課題」にみえても、都市イノベーションを実践した都市のもつ固有な歴史や状況、取り組み方に内在する特殊性などさまざまなファクターがからんでいるので、なかなかそれを「真似る」ことはできません。
とはいえ「1回限り」では普遍性をもたないため、当事者には意識されなかった事項も含めて都市イノベーションにつながる要因を発掘・整理分析して複数繰り返し、イノベーションが通じる前提や範囲、可能性や限界・課題、持続性を維持するための仕組みや体制、それを支える有効なツール(条例などの法令、経営手法、組織運営、インターネット等の技術的プラットフォームなど)を明らかにすること、といえそうです。
「都市イノベーション2020」はその第1話にあるように、オリンピック開催決定により「新たな意味を帯びた貴重な時間を得て」はじめました。7年あった時間は5年となり、まだ「切迫」こそしていませんが、「課題」の意味も変質してきました。例えば国立競技場をめぐる議論も、総論レベルから各論レベルに。しかしまだまだ工夫も足りません。次のステージで、後から「新しい国立競技場は都市イノベーション的成果だねぇ。あのときああがんばったから真の国民的財産になったよね。」と言えるような展開があってほしいと思います。(資料1に関連記事)
たとえばサッチャー政権下でカットされてしまった文化施設の維持や社会活動費をなんとか挽回しなければと立法された「国営宝くじ基金法」。ギャンブル的性格が問題との国会議論を乗り超えて運営がはじまり、歴史的遺産の再生からオリンピック選手の養成、ミレニアム事業の推進からNPOの活動支援まで、そのときどきの「切迫した」課題解決のため広く活用されてきました。(詳しくは資料2の第5章以降へ)

(資料1)
神宮外苑(都市イノベーション2020 第8話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20131026/1382797819
ロンドンオリンピックスタジアムの「その後」(都市イノベーション2020 第37話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20140709/1404873801
琵琶湖疏水
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20130305/1362457545(都市イノベーション読本 第84話)
(資料2)
・『イギリス都市計画の新動向 新世紀へのチャレンジ』(都市イノベーション2020 第4話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20130912/1378966291