『銀座・資本論 21世紀の幸福な「商売」とはなにか?』

7月1日に発表された路線価によると、銀座5丁目鳩居堂前が30年連続で最高だったとのこと。しかも東京のベスト10の中では前年度からの伸び率も14.2%と最高です。「東京1極集中の加速で日本はどうなっちゃうんだろうね、、、」との声も聞こえてきそう(自分の声?)ですが、これに関するさまざまなデータで最も目を引いたのは、三越伊勢丹の6月の売り上げ前年比が2ケタに達し、特に好調だった三越銀座店では売上高に占める免税品売上高が約27%に達したとの数字でした。
ついに銀座三越がロンドンのハロッズのようになる時代が来たのかと、、

このような文脈で都市イノベーションを考えるのにぴったりな本が『銀座・資本論』です。先週、よく行く銀座教文館の売り場のほうぼうにこの本が並べてあり、自然に手に取るうちにレジに向かっていたのでした。講談社+α新書、2015.3.23刊。著者は渡辺新。
銀座の老舗店主でもある著者が、これぞという銀座の商人(あきんど)たちにインタビューしてまとめた本。「資本論」などという仰々しいネーミングは、「○○資本(論)」ブームにあやかろうとする安易な考えかと思いきやそうでもなく、1章ずつ読み進めていくと、そこには「資本」というものは何か、「銀座」というのはどういうところか、「国際化」とはどういうことか、「ビジョン」とは何か、「まちづくり」とはどうあるべきか、そもそも「都市の魅力」「都市の文化」とは誰がつくり出しているかなどを考えるためのヒントが、あちこちにちりばめられていました。決して「論」をなすような書ではありませんが。
内容そのものにはふれませんが、「銀座三越がロンドンのハロッズのようになる時代」について少々。
ハロッズは1985年にエジプトの富豪に615百万ポンドで買収され、さらに2010年にはカタール政府系投資ファンドに1500百万ポンド(最近のレート換算(1ポンド190円)で2850億円)で買収されたそうです。
商人(あきんど)精神にもとづく商売がしっかりと引き継がれる銀座のなかに次々とファストファッションや世界のブランド旗艦店が新規参入するなど時代時代に応じて新たなエネルギーを吸収しつつ、あこがれの銀座で買い物をしようと世界から旅行者のみならずリピーターがどっと訪れるようになり、そうしているうちに資本そのものを大型買収しようとする世界のマネーが流れ込む世界です。