“芝公園”

「都市イノベーション2020」も第99話。今回のテーマは芝公園です。とはいえ、“都心のオアシス”のはずなのに、どこが“芝公園”なのかまったくわかりにくく(実際のところわからず)、かなりもったいないことをしている貴重な資源ととらえて、まずは蝉も鳴きはじめた現地へ。
なにせ“芝公園”は細切れで「1号地」から「25号地」まで分かれています。「もともと真ん中にある増上寺の境内だったものを戦後切り離した結果、真ん中がすっぽり抜けてしまったのだ」と解説にはあるのですが、これはあまり正確ではありません。昔の増上寺境内で今の増上寺でない部分は、さまざまな経緯を経てホテルやオフィスやマンションなどさまざまな土地利用に変貌していて、「1号地」から「25号地」の増上寺以外の部分が必ずしも「芝公園」ではありません。さらに実際には、敷地ごとに囲われ、道路で分断されるなど、一体としての「芝公園 」が感じられず、「小さな芝公園」がたくさんある感じです。1947年(昭和22年)の地図をみると戦災復興計画らしき道路拡幅の点線がありますが、これもその後に縮小されたり、前のオリンピックの際に首都高速の用地になったりで、本当の「芝公園」とは何かを定義しようとすると途方に暮れてしまいます。住居表示の変更もその複雑さを増す要因です。
21世紀の都市イノベーションとは、こうした状態を解きほぐし、新たな概念としての<芝公園>を、周囲の環境資源とネットワーク化させ、本当の意味での“都心のオアシス”にしていくことなのではないかと思います。