ロンドン中心部の計画ガイダンス(SPG)がパブコメ中です

Planning誌の10月9日号(p25)に、2015年3月に改訂された『ロンドンプラン』(⇒関連記事1)を補完するガイダンス(Supplementary Planning Guidance)案が解説されています。
今回協議中(2015.9.15〜2015.12.8)なのは『Central Activities Zone(案)』(⇒下記参考資料1)。
ロンドンの中心部は世界的に重要なオフィス、文化、歴史等が織りなす場所であることを強調しつつ、中心部全体の方針を示して、各区でローカルプランを改訂する場合の留意点などを述べています。
125頁におよぶ(プリントアウトすると)厚い方針書ですが、ところどころに最新の動向や事例が織り込まれているので、最新のロンドン都市計画事情を知るための参考書にもなりそうです。

なかでも市長が「はじめに」で強調しているのは、国の政策でオフィスから住宅への転用が許可無しでてきる制度に関連した「次」なる策についてです(⇒関連記事2)。
現在ロンドン中心部は「許可無しで転用できる」規定の除外エリアにしてもらっているのですが、もしこの措置が解除された場合には‘Article4 Directions’を使って(でも)オフィスが住宅になってしまうのに歯止めをかける、とのメッセージを発し、Planning誌の記事でもそれをメインの話題としてとりあげています。この‘Article4 Directions’は、一般に「許可無しで転用可能」なものに待ったをかけられるもので、これまでは歴史的建造物や景観に関連して多く用いられてきました。その応用バージョンということから「Office to residential Article 4 Direction」などと呼ばれています。
既に、除外エリアにしてもらえなかったロンドン中心部のすぐ外側の区、具体的にはイズリントン区とハックニー区ではこの規定を使っていて、市長はこうした経験を参考にするとしています。今、「この規定を使って」と書きましたが、イズリントン区が最初に区全域を適用区域にしようとしたところ中央政府から待ったがかかり、すったもんだした結果、区域を特定してこの規定をようやく使えるようになった経緯があるようです(⇒下記参考資料2)。

けれどもロンドン都心部には大量の住宅需要が見込まれているのも事実。このガイダンス案では、ロンドンの強みを犠牲にすることなくこうした住宅需要にも応えていくのだという強いメッセージと、それを実現可能にするためのさまざまな道具立てに関する考え方・方針が含まれています。

(参考資料1)パブコメ中の『Central Activities Zone(案)』
http://www.london.gov.uk/priorities/planning/consultations/central-activities-zone-draft-supplementary-planning-guidance
(参考資料2)‘Article4 Directions’の方針を説明するイズリントン区のHP
http://www.islington.gov.uk/services/planning/Pages/Permitted-development.aspx

[関連記事1]ロンドンプランの改訂
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20140319/1395227958
[関連記事2]オフィスから住宅への転用が許可無しでてきる制度
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20140613/1402632706