SOCIAL URBANISM AND THE POLITICS OF VIOLENCE

コロンビアのメデジン市の都市計画をテーマにしている卒論生(Oさん)がいて、“Social Urbanism”という概念が最近気になるようになりました。もしかすると、21世紀の都市イノベーションを左右する重要な概念かもしれない。とはいえ、もしかするとたまたまメデジン市だけに通用する政治的メッセージにすぎないのかもしれない、、、などともやもやしていると、標記の図書が今年出版されているのを発見。昨日届いたので読んでみると、、、(palgrave,2015。著者はKate Maclean)

すごいですね。研究者魂というか、とことん理解しようという熱意というか。本自体は100頁すこしのすぐに読める内容ですが、そこに込められたパワーには圧倒されます。
あのコロンビア(メデジン市)の犯罪の構造を、1つ1つ具体的に組織ごとにとりあげ、その「犯罪」といわれているものが、実は構造的に放置されている地区住民たちの安全を守ってあげることでその組織が支持を得ている(た)ことや、家族の現代化に伴い絆が薄れていてボトムアップに地域を守ろうとする力が薄れていることや、男性中心のエリート政治の構造などが淡々と描かれ、その一方で、ベルリンの壁崩壊後のグローバル化がいかに地域の起業家・企業化たちに発奮を促したかがバランスよく描かれています。これらが“Social Urbanism”の背景としてていねいに描かれているだけでなく、“Social Urbanism”が出てくるプロセスそのものも具体的にとりあげられています。

「21世紀の都市イノベーションを左右する重要な概念」なのか「たまたまメデジン市だけに通用する政治的メッセージ」なのかを、この本を読んだ印象としてあえて書くとすると、広い意味で、テロリズムや都市犯罪を理解しその対処方策を検討するための基本文献の1つであると思います。また、メデジン市でどうしてあのような革新的な都市計画といわれるものができた(といわれている)か、を理解するための必読書だと思います。
けれどもこの筆者が留保しているように、果たしてもともとそのような構造のあるコロンビア(メデジン市)で、これまでの成功がこれからもサステイナブルに続くものかについては、引き続ききちんとした「視点」をもって見守らなければならないのだと思います。