ヴェネツィア 東西ヨーロッパのかなめ 1081-1797

講談社学術文庫2192。2013刊。元は岩波書店。原書は1974年。ウィリアム・H・マクニール著。
学部の講義「都市と都市計画」で毎年受講生にきいている「注目する優れた(好きな)都市、都市計画は?」で、今年トップになったのはベネチアでした(10人。国内では同数で常連の京都)。はじめてのことです。
そんなわけで、この2ヶ月ほど気になっていたベネチアですが、偶然のきっかけからこの図書に出会いました。本書は、そのベネチアが都市としてなぜ発展したかだけでなく、なぜ、どのように衰退したかを、きわめて多岐にわたる視角を提起しつつ、深く活き活きと描いた傑作です。その描写は客観的かつ精緻で淀みなく、たとえばベネチアのシステムとしての衰退の描写などは、まるで成長のエネルギーを失いかけている日本の状況をみているようで、ハッとさせられます。逆に、都市国家が一体として盛り上がる成長過程で編み出された数々のイノベーションの描写は、たいへんワクワクする内容です。
このような歴史書があったとは、、、

都市の文明史的な興隆や葛藤をこのようにして描いた書に接すると、現代の都市をめぐる諸課題を読み解き立ち向かう知恵が湧いてくるような気がします。

ベネチア関連記事]
・「堺−海の都市文明」(都市イノベーション2020 第66話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20141215/1418611574
・『発展する地域 衰退する地域』(都市イノベーション2020 第69話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20150114/1421229776

[参考] 「【コンセプトノート】都市イノベーション」(Blog内統合ファイル)は以下のURLで。
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20141110/1415588957