CONTESTING THE INDIAN CITY

Gavin Shatkin編著、WILLY Blackwell、2014刊。副題は「Global Visions and the Politics of the Local」。
昨年11月にブータンに行く際、途中、インドアッサム州の州都グワハティーに立ち寄った(ティンプーに着いたと思い降りそうになったことは笑い話となっている)ことや、8月にドバイに行った際、ちょうどムンバイの上空あたりを通過したことなどもあって、以前から気になっていた『Worlding Cities』(⇒関連記事)の姉妹本ともいえるこの本を読んでいます。

ネオリベラリズムがインドの諸都市に強く影響を与えるようになり、都市計画にかかわるガバナンスがどのように変化しているのかを、主体間相互の争い(contesting)の観点からリアルに描き出した興味深い図書です。
とりわけ、自国の経済を海外に開こうとしたとき、土地そのものをまとめて海外資本の投資対象にする必要に迫られるため、土地・不動産制度そのものを改革しなければならず、土地・不動産を通した金融制度が変化していく、、、しかし、政府や政治の構造が、地元自治体−州−国の3層構造で、新しい制度の実施過程でさまざまな葛藤や失敗を再生産している。その状況が、ムンバイ、バンガロール、アーメダバード、デリー、ジャイプール、マンガロールをケースに描き出されます。
たとえば、映画『スラムドッグ・ミリオネア』に出てきたムンバイの代表的スラム「ダーラビー」の再開発をめぐる葛藤は、グローバルな力と国内のローカルな場所とのせめぎ合いが、国レベルの土地・不動産制度の改正、動かない政府をコンサルタントとして動かそうとするM氏、地元民からの訴えを聞きそれを代弁しようとする自治体議員、M氏が策定したスキームによる国際コンペに応募しようとする建築家や不動産事業者などが複雑に入り乱れて争う(contesting)プロセスとしてリアルに描かれることで、“グローカル”というのはこういうことなのだという象徴的な出来事として理解させられます。

[関連記事]
・Worlding Cities (都市イノベーション読本 第93話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20130507/1367897544
・THE NEOLIBERAL CITY (都市イノベーション2020 第26話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20140501/1398916231