近隣計画を立てる気配の無い自治体はなぜそうなのか?

昨日の記事のような「親近感のある」「素朴な」事例も興味が湧きますが、一方で、一昨日の記事で取り上げたように、たとえば、格差拡大のような問題を、近隣計画の策定がそもそも伴っているかもしれません。その検証にはかなりの研究が必要と思われますが、ここでは、「近隣計画に着手する様子がない自治体があるのはなぜなのか?」という素朴な疑問に、素朴な仮説をもって少し考えてみることにします。
第一、たまたま説。第二、メリット無し説。第三、住民側多大な負担説、第四、複雑な大都市での必然説。第五、自治体敬遠説、第六、自治体側の積極的無視説、第七、代替施策対応説です。
ロンドンの中にそのような、近隣計画策定の「気配の無い」区はいくつもあります。特にマップで全体をみると、策定活動が活発なエリアはロンドンでは都心区に集中し、かつ、シティから西のいわゆる裕福なエリアに集中していることがわかります。そこで、最も気配の薄い、シティから東のインナーシティに位置するニューアム区を取りあげて考えてみます。
(参考マップ)http://www.ourneighbourhoodplanning.org.uk/about/npa_area_list

まだ策定の気配が無いのは、たまたまかもしれません(第一説)。区のホームページで都市計画のページをみても、区全体のマスタープランであるローカルプランの説明はあるのですが、近隣計画の説明がなかなか見つかりません。
ここで、苦労してやっとレファレンダムが通ったインナーシティのBalsall Heath(バーミンガム市⇒近隣計画の運用(その14))を思い出します。なんとか策定しようとしたのだけれども、近隣計画向きの項目ではないプロジェクトやらマネジメント系のまちづくり要素ばかりで、結局、本文に書けなかったものが多かったと。そう。民間の開発計画に対して制御するような場合は近隣計画向きだけれども、そもそも失業が多いなどの問題地区では近隣計画のメリットは感じられないだろう(第二説)。また、自治体側でも仕事ととらえにくいと(第五説)。そもそも第三者評価に耐えられるきちっとした計画書を近隣住民が立てるのはたいへんなことで、昨日のSudbury Townも、あそこまでいくのはたいへんだったはずだと(第三説)。特に課題が複雑で利害関係者も多い大都市ではたいへんなこと(第四説)。
そういえば「Localism」は「小さな政府」をめざす保守党の政策。古くから労働党が強いニューアム区では、もしかすると、積極的に近隣計画を立てたくないと考えているのかもしれない(第六説)。考えすぎかもしれないし、第二、三、四、五の要素の方が強いのかもしれない。でも待てよ。ホームページにたくさん並んでいる「Community Neighbourhood」って、何だ? 近隣計画ではない方法で、既に、ニューアムらしいやり方で近隣ベースのまちづくりを相当やっているようにみえます(第七説)、、、

このようにとらえつつ、では、なぜ逆に、都心部ウエストミンスター区では既にほとんどのエリアで近隣計画を策定中なのかと考えると、リアルな近隣計画の意味が浮かび上がってくるだろうと思います。

[参考]
Localism and Planning (イギリス最新都市計画統合ファイル)