検証・2050日本復活(1)高速化

3つ前の記事で『2050日本復活』をとりあげ、この書のシミュレーションの条件・内容を自分自身でチェックすることが大切と書きました。そこで、『2050日本復活』のなかから(章の構成にとらわれず独自に)5つのテーマをとりあげ、簡単な検証をしてみたいと思います。キーワードは「高速化」「非グローバル化/新グローバル化」「スマート化」「生活中心化/地域個性化」「創造・創出化」と仮に名づけておきます。
今回はその(1)の「高速化」。「都市イノベーション開墾」の第67話、「都市イノベーション」シリーズ通算(⇒参考)では第267話です。

『2050日本復活』の第1章「2050東京」で「彼」は35年ぶりにワシントンDCから東京へ出張します。乗っているのは「ミツビシ808型超音速ジェット旅客機」で、飛び立って2時間半で「快適な空の旅も終わろうと」していて羽田に降下をはじめます。
ここからが検証。ワシントン-東京10920キロで、羽田到着まであと10分かかったとすると2時間40分の飛行。平均時速4095キロ。音速を1225キロとすると、この速度はマッハ3.34。
現時点においても非民間機も含めればマッハ3.5くらいは出せているようですので、一応理屈上は成り立つ話です。『2050日本復活』では第1章の25〜26頁にかけて、マッハ3.34が出せる民間旅客機(ここでは全日本航空機とされている)が成り立つためのストーリーが書かれていますが、さらに、世界の長距離路線はこの「ミツビシ808」が独占していること、そのおかげで日本は貿易黒字になったとまで書いてあります。それはさておき、2050年には東京-ワシントンDC間を2時間40分で飛べる話は、とりあえず無くはなさそうです。

そうすると、以前の記事で、「もし仮に「陸」並みに0.17倍のスピードで「空」を行けるとすると1030×0.17=175分でパリに。広島程度の近さです。気軽にショッピングといきたいところですが、そうはなりそうもありません。」と書いたことは(⇒関連記事1)消極的将来像と言わざるを得ません。「ミツビシ808」に乗るとパリまで(9730キロ)145分なのですから。
ついでに地球の裏側のリオまで(18590キロ。給油なしで行けるとして)4時間30分。おお、これは革命的。時差の問題や空港への発着時間なども無視し日本時間だけで考えるとすると、例えば、朝、8時に羽田を出てリオに着き、午後一で空港脇のホテルで会議をして午後3時20分頃パリに向かい(リオ-パリ間は9180キロ。2時間15分で到達)、6時からの会議に間に合ってそれを済ませたあと8時半の便に乗り、夜10時55分に羽田に着いて家に帰る、などという話もありえなくはない、ということかもしれません。
そんな人はいないかもしれず、テレビ会議なら移動しなくてもよいでしょ、と思う方が大半だとしても、「高速化」によって、世界の(都市の)可能性がかなり広がり、グローバル社会における「移動」の意味も大きく進化・変容しそうです(⇒関連記事2)。

[関連記事]
1.「空か陸か海か/空と陸と海と」(都市イノベーション2020 第71話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20150224/1424749035
2.『モビリティーズ 移動の社会学』(都市イノベーション2020 第79話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20150506/1430900566

(参考)【コンセプトノート】都市イノベーション
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20141110/1415588957