『秀吉の普請』(京都と都市イノベーション(その2))

季刊大林No57に『秀吉の普請』が特集されました(2016.8.10発行)。正確に書くと、「されました」というより、ちょうど京都へ行く前々日、この号の企画編集に携わったO社のH氏からこの号を手渡され、大坂の都市計画ではなく京都の都市計画が特集されていることに大いに関心を持ちました。民間企業誌でこれだけ本格的かつたいへんおもしろい企画をたてたことにも驚きましたが、その内容もかなりのもの。
特に、「方広寺大仏殿の復元」をプロジェクトチームを編成して行い、「構造解析」や「施工方法の検討」までやってしまうところはO社ならではの快作。ちょうど昨日のNHK大河ドラマ真田丸』では関ヶ原の戦いで徳川方が勝利した知らせがもたらされ、いよいよこれから方広寺の鐘をめぐるいざこざがあり大阪冬の陣・夏の陣へと向かうところ。なかなかタイムリーです!
ついでながら現地で感じたのは、現在、京都国立博物館の新館はこの方広寺大仏殿の敷地内に建てられているばかりか、その回廊跡の上に一部重なりながら建っている。もし本当に「方広寺大仏殿の復元」をやろうとすると、このあいだ建ててしまった京都国立博物館の新館にどいてもらわなければならない。けれどもあくまで「方広寺大仏殿の復元」はシミュレーション。むしろ、現在本当に話題になっているのは、東京への一極集中防止のため移転させる計画の文化庁の移転候補地にこの京都国立博物館も7月に加えられたことです。

ややこしくなってきたので元に戻ると、「京都の近世都市化」を大胆に進めた都市計画家秀吉の偉業はきわめて大きく、それは大坂も含めた「近世都市化」が現在の都市に直接つながるという意味において、信長から受け継いだ都市計画を発展させつつ家康へと受け渡していく秀吉の役割はとてもおおきかったのだと思わされます。
「京都の近世都市化」を他の近世都市化と合わせて総合的に論じた伊藤毅氏の論考「近世都市の成立」と合わせて、このあたりの関連記事をまとめておきます。

[関連記事]
・「近世都市の成立」(都市イノベーション2020 第63話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20141129/1417234824
・「信長の城」(都市イノベーション読本 第79話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20130129/1359426558
・『堺−海の都市文明』(都市イノベーション2020 第66話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20141215/1418611574
・『家康、江戸を建てる』(都市イノベーション開墾 第49話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20160503/1462258948

[京都と都市イノベーション]
琵琶湖疏水(都市イノベーション読本 第84話)=本日より、「京都と都市イノベーション(その1)」とします。
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20130305/1362457545