『OF PLANTING AND PLANNING』(Second edition)

『植えつけられた都市』の邦訳で2001年に京都大学学術出版会から出た「Of Planting and Planning」(1997)の第2版。Routledge,2013。副題は、「The making of British colonial cities」。著者のRobert Home教授をはじめとする、初版以降のこの分野の研究成果を反映させた最新の成果。
イギリス植民都市に限られるという限界はありますが、淡々と語られる内容は誠実かつ真摯で、都市イノベーション開墾的視点からは以下のような新しい視点の所在を感じました。
第一。「planning(近代都市計画)」の前史としての「planting」という視点。一般にplanningは土木と建築と造園の統合という視点で説明されてきましたが(⇒関連記事1,2)、plantingからplanningへの進化という視点が提示されています。
第二。しかし、植民都市においてplanningへの進化はかなりの限界があったことが語られています。ここでいうplanningとは、西洋近代都市計画、さらにいえばイギリス本国の都市計画であり、そのような意味での<都市計画>の相対化がなされるのと同時に、日本人(の都市計画専門家)が抱く「都市計画」像をも相対化する契機を与えてくれます。
第三。特にこの第2版ではアフリカを含む第三世界の都市計画史の最新成果が加えられており、現代都市計画にかかわる際の重要な知見を提供してくれます。
第四。「イギリス植民都市計画史」がほぼカバーされています。これに例えば「スペイン植民都市計画史」が加わるだけでもかなりのカバー率になると思われます。是非読んでみたいと思います。
第五。イギリス本国(のみならず世界の)都市計画史で有名な都市計画家のワールドワイドでの仕事が多く紹介されていて、それだけでもかなりおもしろい。特に、何度も登場するパトリック・ゲデスは、もっと研究されてもよいのではないかと思います。
第六。ある特定都市の都市計画が何度も書き換えられる場面を通して、プランを立案する側の思想や考え方と地元側の政治状況や文化的特質とがからみあう様子がわかり、興味深い。特にエルサレムの都市計画。ゲデスも登場しますが、すぐに次の計画にとってかわられます。
最後に。「all cities are in a way colonial」という序章の言葉(p1)。それに続く理由説明をみると、なかなか興味深い視点です。

[関連記事]
1.『アメリカ都市計画の誕生』(都市イノベーション読本 第65話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20121016/1350359560
2.『The Plan of Chicago』(都市イノベーション読本 第76話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20121225/1356407762
3.『ドバイ開墾(4) : ニュードバイ』(都市イノベーション開墾 第4話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20150904/1441323131
4.『A HISTORY OF FUTURE CITIES』(都市イノベーション読本 第100話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20130625/1372127319