『Planning Latin America’s Capital Cities 1850-1950』

スペイン植民都市計画史も「是非読んでみたい」(⇒関連記事)と探したところ、「そのもの」は見つからなかったものの、本書は、19世紀初頭にスペイン・ポルトガルから独立した中南米各国が、それぞれの国の顔となる首都を、植民都市の状態からいかにつくりなおそうとしたか、そしてそのあとすぐにやってくる「近代化」の時代に何を考え、どう葛藤しながらそれぞれの首都を形成していったかが語られていて、たいへん興味深い内容です。

とりわけ19世紀中盤に大改造されたパリが多くの首都で参照され、プロジェクトとして取り組まれていく様子や、やがて、そうしたパリ贔屓が国内勢から批判されて立ち行かなくなる様子、しかしながらそうはいっても「わが国の独自文化」とは何かについて思い悩むエリートたち、そうこうするうちに次第にアメリカの影響が強くなり、さらには近代建築・都市計画運動が活発になってル・コルビュジェやバリー・パーカーなどがやってきて、ヨーロッパからも、自国の伝統や歴史からも独立し開かれてゆくさまが、多くの図面、計画案、写真などとともに解説されていきます。とくにリオデジャネイロサンパウロの両者をとりあげつつ、「ブラジルの首都にふさわしい都市とは」との問いに答えるべく新都市が選択されていく過程は読みごたえがあり、また、「首都」というものはどういうものかを考える刺激を与えてくれます。
編著者による総論の2章につづき、ブエノスアイレスリオデジャネイロサンパウロサンチアゴメキシコシティ、リマ、ハバナ、カラカス、サンホセが取り上げられます。

Routledge、2002刊。編著者はArturo Almandoz。
なお、2015年にこの本の続編ともいえそうな『Modernization, Urbanization and Development in Latin America, 1900s-2000s』が同じ編著者・出版社により出ています。

[関連記事]
・『OF PLANTING AND PLANNING(Second edition)』(都市イノベーション開墾 第73話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20160914/1473824634

[現代中南米都市計画関係]
・『LATIN AMERICAN URBAN DEVELOPMENT INTO THE 21st CENTURY』(都市イノベーション開墾 第17話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20151202/1449040479
・『SOCIAL URBANISM AND THE POLITICS OF VIOLENCE』(都市イノベーション開墾 第16話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20151201/1448941928
・『Happy City』(都市イノベーション2020 第53話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20141001/1412117063

[他地域の類似するアプローチの図書]
・『Planning Middle Eastern Cities(2004)』+『The Evolving Arab City(2008)』(都市イノベーション開墾 第13話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20151029/1446087590