アジスアベバ開墾(4) : インフラ整備と都市エネルギーの未来

2系統のLRTが十字を描くように開通しました(南北線が2015年9月、東西線が同年11月)。サブサハラで初めて。中国資本によるプロジェクトです。キャパシティが小さい(車両編成が短く運転間隔が長い)ためか、「いつも満員」と評価されています。最初は日本式にとギュンギュン詰めのところに無理して乗ったところ不評だったため(ごめんなさい。)、よく観察し、また乗客とコミュニケーションをとりながら何度も乗るうちにむしろ皆から親切にされ、よい思い出になりました。けれどもキャパシティ不足は否めず、今後の交通政策はあいかわらず重要です。
むしろなんといっても特徴的なのは、道という道に人々が溢れ出ていて、歩いている人がとても多い。特に目立つのはそれなりに整備された幹線道路沿いに多くの人が歩く、歩く、歩く。頻繁に小さな乗合バスへの乗降があちこちでありますが。幹線道路整備にかなり力を入れている(と思われる)なかで、まだ自動車の普及がさほど進んでいないためにそのギャップが路上空間にあり、その隙間のような空間に、物乞いや歩行者や靴磨きや工事現場の人たちも含めて、アジスアベバに暮らす人びとのようすがずっと展開している、といった感じでしょうか。
こうしたインフラ整備が、たとえば鉄道の更新(ジプチ−アジスアベバ間の鉄道。2016年10月開通)なども含めて急ピッチで進んでいますが、エチオピアならではの事業として、ここでは巨大ダム計画「Great Ethiopian Renaissance Dam」をとりあげます。

ナイル川スーダンで分岐して「青ナイル」となりエチオピアに入った所に建設中の、6000メガワットの発電力をもつこのダムは、完成すれば売電も可能な重要な産業施設です。けれども下流で最も影響を受けるエジプトから深い憂慮の念が示されたため、「エチオピアが必要なのは電力であって水ではない。一時的にせき止められても基本的に影響は小さい」と説明するなどして、2015年に暫定合意に達したというもの。国内でも移転住民への補償問題や環境への影響が心配されています。2017年7月に完成予定。満水になるまで5〜7年を要すると見積もられています。
しかしここで注目したいのは、エチオピアが2010年時点の「水力電力率」が89.7%と、世界でもトップクラスであること(ちなみに日本の電力約100000メガワット強のうち水力は7000メガワットほど。他のほとんどは火力発電)。石油にも原子力にも頼らないままどこまで経済成長できるか。近年では地熱発電も期待されているようで(JICAの2015年レポートでは2037年までに最大5000メガワットと試算(全体で20000〜30000メガワット))、21世紀後半にさしかかる頃にアジスアベバは、100%の自然エネルギーによる、世界で最も進んだイノベーション都市になっている可能性もありそうです。

最後に。“常春の”高原都市であるせいか、ホテルには空調設備さえありませんでした(一応探したが見つからず)。