『近代世界システム(2011年版)』と都市・都市計画

ウォーラーステインの同書(1974〜)が改訂されて、2013年に訳書が出ました。名古屋大学出版会。
正確にいうと、1974年から始まったこの著者の刊行は4巻まで出て終わる予定だったものが、「おそらく第七巻にまで及ぶかもしれない計画も立てている」(2011年版への序)、とされている未完の書です。ウォーラーステインは1930年生まれのため2011年で81歳。おそるべき巨人です。
なかでも近代世界の出発点を16世紀にまでさかのぼり、大航海により新大陸が「発見」され「世界経済」として地球規模でのシステムが立ち上がり進化しはじめたとするグローバルヒストリーをうちたてたことは、(やや話は違いますが)プレートテクトニクスにより地震のメカニズムを説明しようとした1960年代のパラダイムシフトに似た出来事のようではなかったかと想像します。

ここでは、第一巻が近代都市を考える際にもそのスタートとして重要と考え、1つ前の1500年を扱った記事、2つ前の「1492年」に接続するあたりの話を中心にします。

1521年、テノチティトランが陥落。そのアステカの中心都市を破壊して、まさにその上にメキシコシティを建設。1533年、インカの中心都市クスコ占領につづき、そこを破壊してスペイン都市計画によりクスコ建設。利便のため海岸近くに1535年、リマ建設に着手。
しばらくの間、これらメキシコとペルーに「副王」を置き中南米を経営。その間、1536年アスンシオン、1538年ボゴタ、1541年サンチアゴ、1580年ブエノスアイレス(最初の建設は1536年だが1541年放棄)を建設。その他の都市も必要に応じて都市計画がなされ、それら都市計画は1580年「インディアス法」第四編として体系化されます。
これら諸都市は各地域経営の拠点となり、「資本主義的企業体に転化した」(第一巻、p95)エンコミエンダにより鉱山開発、プランテーションを展開。
こうして南北アメリカは「世界経済」システムの一部となりヨーロッパに一体化していきます。
ウォーラステインの議論はこのあと第二巻、第三巻と続き、世界の各地が次々に「世界経済」に取り込まれ、その巨大な地球規模の「世界経済」の中で特定の役割を担う(担わせられる)ようになるプロセスが描かれていきます。「周辺」に位置づけられてしまった地域には厳しい現実が待っている。しかしシステムの中心となるべき「中核」争いもたいへんなもので、「中核」でいられる時間はそう長くはありません。

あくまで近代を「世界経済」の視点で描いたもの、という制約はありますが、このような視点で都市をみると、近代世界システムの一部をどのように担ったかの歴史が年輪のように見え隠れするはずです。

【In evolution】世界の都市と都市計画
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