『謎のお雇い外国人ウォートルスを追って』

明治の前半に日本で活躍した外国人技術者は約2300名におよび、土木建築分野だけでも約150名が確認されるといわれます。
1982年に刊行された『明治の東京計画』(藤森照信著)において「幕末の長崎に忽然と現われ、明治維新と交叉し、そして彗星のように一筋の光芒を引いて去っていった謎の建築家として知られている」とされた、銀座の生みの親ウォートルスの“謎”に迫ったのが、本年3月15日に発行された本書。

そもそも日本の近代都市計画に多大な貢献をしたばかりか、銀座という、日本を代表する、日本の文明開化のとっかかりをつくった重要な業績を残した人物が“謎”のままではたいへんマズイ状態。
本書は、ウォートルスがどこで生まれてどう育ったかという来日以前の来歴と、「彗星のように去っていった」あとどうしてしまったかという離日後の人生について長年研究してきた「銀座文化史学会」の成果です。
海外調査をはじめ数々の努力の結果、かなりのことがわかってきました。母国においても近年、ウォートルス研究が進んでいるようです。

よく行く銀座教文館で見つけました。銀座文化史学会編集・発行。研究成果の多くは、子供服の「ギンザのサエグサ」の三枝進氏によるもの。頭が下がります。

“謎”はかなり解明されましたが、なぜ彼はこのようなトータルな都市計画に能力を発揮できたのか?
その1つのヒントは、『明治の東京計画』の藤森氏の解釈(同時代ライブラリー版p9)にありそうです。都市計画という、総合的な専門性と実践性。本書によってさらに、ウォートルスが母国で培ってきた空間像とそれを支える技術などについてイメージがふくらみます。本当はさらに、ウォートルスの考えを実行に移すための日本政府側の対応(力)などについても知りたいところ。

銀座は未来に向けて進化するのと同時に、過去に向けてもその理解が進化しています。

【関連記事】
・『銀座・資本論 21世紀の幸福な「商売」とはなにか?』
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20150702/1435807577

【In evolution】日本の都市と都市計画
本記事をリストに追加しました。
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20170307/1488854757