地方創生の手がかりとなりそうな特徴ある都市はどこに?

昨日の毎日新聞に、野村総合研究所が実施した「都市の成長力ランキング」についての記事が掲載されていました。これはおもしろいと、原データにあたるべくいろいろトライしたのですが、さすがにデータそのものは出ていません。最大限正確な情報をもとに、この調査の意味を類推してみます。
まず、「都市の成長力ランキング」というのは微妙です。実は、本調査の「タイトル」にあたるものはどこにも見あたりません。「成長力」とか「潜在成長力」は確かにメインの軸として分析されていて新聞記事でもそれを使っていますが、「成長」という概念自体の幅を広げた、あるいは地方都市のめざす「別の道」を探ろうとしたところにこの調査のおもしろさがありそうです。
第二。分析方法を最も客観的に示しているのが2017年7月5日の第255回NRIメディアフォーラムで使われた(とされる)スライドの22-27枚目。特に、「風土」「基盤」「環境」の3要素のうち「風土」「環境」分野では住民アンケートによる評価項目が多数含まれています。ただし、どのような設問だったかなどの客観情報は書かれておらず、設定したライフスタイル別にどの指標を使ったのかも書かれていないので、正確なところはわかりません。また、全国の100都市を選んだとしており都道府県を網羅しつつ県庁およびその次の人口規模の都市などが選ばれたり選ばれなかったりする感じです。しかし北海道は8都市、愛知県は6都市が選ばれているなど、バラツキはあります。
第三。「総合ランキング」だけでなく、「ポテンシャルランキング」や「ライフスタイル別ランキング」などの評価を行ったところが本調査の最大のおもしろみだと思います。1つだけ例をあげます。4つある「ライフスタイル別ランキング」のうち「子育てしながら働ける環境がある」の第1位は松本市。そのあと、前橋市佐賀市鹿児島市上田市、福岡市、長岡市熊本市奈良市出雲市と続きます。「地域コミュニティの絆が強く、家族と過ごす時間も多い傾向にあり子供を見守る環境にある」「医療や買い物が充実し生活コストも安いため、市民の生活満足度が高い点も特徴」「治安や安全性が高いこと、公園や緑地など憩の空間が充実しているなど子育てには重要な要素も満たしている」といった解説が付されたライフスタイルです。先週も佐賀市中心市街地の衰退をめぐってゼミでも議論になったところですが、「駐車場だけらけで困った状態」のこの都市の課題を考える際に、このような尺度を当てて考えてみることも重要ではないかと思います。
第四。(欲をいえば)データやアンケート設問そのものや100都市の選定根拠を公表していただくか、アクセスしやすくしていただくことを望みます。そうすると例えば、4つのライフスタイル別の結果と「総合ランキング」「ポテンシャルランキング」との関係など、いろいろな切り口で都市の状況や課題や可能性を探れそうです。既に取り組んでいる最中なのかもしれませんね、、、