CILの話(その4):集めた資金を使っていないそれぞれの事情

開発の用途と広さに合わせて賦課金(levy)を徴収するCIL(Community Infrastructure Levy)制度がどうもうまくいっていないのではないかと、国も対応に乗り出そうとしている様子を伝えたのが(その3)
本日手にしたPlanning誌2017.8.18号の冒頭および20-21頁に、Planning誌が独自調査した結果(20-21頁)と、それへの見解(5頁)が出ていて、なかなか興味深い内容です。
まずは結果の方。2013年末までに徴収をはじめた初期32自治体のこれまで(2017年半ば頃までと考えると、短くとも3年半経過)の徴収額は166.3百万ポンド(1ポンド140円として約233億円)だったのに対して使われたのはたった16%(26.2百万ポンド)。いったいどうなってるの、というのが素朴な問いかけ。
以下、当該自治体の見解(言い訳)、使わせるためのアイデア、Planning誌の見解(5頁の論説)の順にみていきます。

まず、当該自治体の見解はさまざまです。最初にはじめたNewark and Sherwood(インフラへの配分0%)は、リーマンショック後の景気後退で当初の見込みに達せず、優先的に進めようとしていたインフラ整備ができない状態と説明。平均的にたくさん徴収できているロンドンの中でも稼ぎ頭のWandsworth区(インフラへの配分8%)は、集めたらすぐ使えなんて言わないでください。ちゃんと、考えていますから(例としてタウンセンターの一方通行化)と説明。続く2番目の稼ぎ頭のロンドンブレント区(同0%)。戦略的プロジェクトの合意形成に時間がかかっている。先月、ウェンブリー地区の都市再生に配分することを決めたばかり、と解説。以下、「成長ゾーン」の指定がかなうかどうかで判断する(つまり時間待ち)ケース、インフラ整備計画の精査に時間がかかっているケース、最近ようやくまとまった資金が集まってきたのでまだ使っていないケース。
一方、徴収と使用の時間差を「問題」とみての批判者の意見(の一端)が冒頭の論説で紹介されていて、それは使用期限を設けて使わさせるというもの。

さて、この論説記事の軍配は?
タイトルにあるように、「未使用分がたまっていること自体は問題ではない」というものでした。使っていない自治体側の言い分は理解できる。むしろデッドラインなんか設けたら意味の無い使われ方に流れてしまうでしょう、と。
今回の(その4)と、1つ前の(その3)を合わせるとだいたい論点は整理されており、あとはこの制度をどうするかの結論を出すのか、当面運用でやっていきましょうとなるのかが見所です。