英国初の本格的シェア・アパートをめぐる話題

本日届いたPlanning2017.9.8号に、「The Collective Old Oak」(資料1=HP)という名の、英国初の本格的大型シェア・アパートの記事が掲載されています。日本でもかなり出てきているのであまり珍しくはないのですが、「イギリス都市計画的観点から何が書いてあるのか?」と、特徴をみてみると、、

日本では売りに出された企業社宅等のコンバージョンという「ストック活用」が目につきますが、この記事では「新築」であることを強調。「The Collective Old Oak」は11階建て546部屋の物件で、豊富な共用スペースを持ちます。むしろ既存ストックとの関係では、ファミリー型の住戸が分割されて「HMOs」と言われる細かな住宅になってしまうプレッシャーを、こうしたシェア・アパートが緩和する役割もあるのではとの解釈。ただし、こうしたシェア・アパートの需用見通しはロンドンで「2022年までに18000戸以上」という程度。ロンドン第2号は新幹線の止まるストラットフォード駅周辺で計画許可の下りた19階建て250戸。両者の中間をとり1プロジェクト400戸とすると18000÷400=45棟/5年間程度です。
「The Collective Old Oak」をHPでみてみると、標準的な住戸部分のレンタル料は週200ポンド(1ポンド150円としておよそ12万円/月)。その他いくつかのタイプがあり、現在、入居者募集中。記事によると平均的には3万ポンドの年収がある28才の専門職の若年世代です。

ややテクニカルですが、こうしたシェア・アパートは「Use Class Order」の建物利用分類上はどのクラスにも属さない「sui generis」と呼ばれる「特定用途」。この「特定用途」には他に劇場やコインランドリーやスクラップヤードなどがあり、開発許可が必要とされます(イギリスではゾーニング制をとっておらず、類似の用途クラス内での用途転用には許可不要とされます)。ちなみに一般住宅は「C3」。「C4」がさきほどの「HMOs」。C3とC4の間では転用可能。そうするとC1やC2も知りたくなります。C1がホテルやゲストハウス。C2がケアホームなどの住宅機能付き施設。こうしたクラスがAからDまであり、その他に「sui generis」があり、これからあれは転用可だが、あれからこれは許可が必要などと、基本ルールが決まっている、との方式です。ここ数年だけでもこの「基本ルール」を変える変えないでかなり熱くなっていますね(⇒関連記事へ)。

[資料1] 「The Collective Old Oak」のHP
https://www.thecollective.co.uk/coliving/old-oak#coliving-intro

[関連記事]
・オフィスから住宅への転用が許可無しでできることをめぐる騒動
(その1)http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20130605/1370430080
(その2)http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20140613/1402632706
・ACVの話(その4) : 許可不要の用途変更をめぐる国会審議
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20170411/1491906074