『The Future of Planning』

Yvonne Rydin著、Policy Press 2013刊。副題は「Beyond growth dependance」。
growth-dependent(開発依存型)」都市計画を改革して「well-being」を目標とする都市計画をめざすための基本的考えと具体策を描いた論説的啓蒙書。低成長を前提とする、新しい社会経済像・価値観を前提としたとき、これまでの都市計画ではやっていけないばかりか害悪をもたらす(もたらし続ける)可能性がある。公正で持続可能な(just sustainability)社会実現のための都市計画へと改革し、それを達成できるツールを拡大しつつ変革し、もってプランナーにも新しい役割が与えられるとする力強いメッセージが込められた図書です。
第6章のp112-113にその概念図が描かれており、続く7-9章に具体策がまとめられています。ここでいう具体策とは、制度そのものの内容というより、どのような方向性をもつツールが望ましく、具体的なものにどのような事例があるか、それをどのように組み込めばよいかのアイデア集です。第7章「Alternative development models」ではE.ハワードの田園都市の、デザインや計画面ではなく不動産ファイナンス面がとりあげられ、地代収入などで現在年間260万ポンド(150円換算で約4億円)を稼ぎ出すレッチワースなどを例に、こうしたモデルの有効性を力説。第8章「Protecting and improving existing places」では、計画許可の国イギリスらしく、さまざまなレギュレーション(Use Class Orderのような基本的メカニズムの精緻化やマスタープランに書き込む政策のツールとしてのさらなる有効化なども含む)の強みをうまく活用しながら、単純な経済原則に流されない仕組みをブラッシュアップするさまざまな方法を列挙しています。第9章は「Assets in common」。いわゆる「コモンズ」にあたるものをどのように保全したり創出・管理することができるか。本ブログでもたびたび紹介してきたACVをはじめ、2011年Localism法などで用意された多くのツールの活用、コミュニティ・デベロッパーや社会起業家の活躍などへの期待が語られます。第10章がまとめの章。既存の都市計画システムをどのように改革するのかを、これまでの章を受けてエネルギッシュにまとめています。

他国のことでありながら、めざす方向は同じ。本書で豊富に取り上げられている基本的理論(をめぐる議論)も、さまざまなツールも、たいへん参考になります。

【in evolution】世界の都市と都市計画
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