メイフェア近隣計画がまもなく地元区に提出されます(ロンドンにおける近隣計画の最新動向(4))

「メイフェア」といえばロンドンを代表する都心部の高質エリア。
以前より、このようなエリアでどのように、どのような近隣計画を策定するのかに注目してきました。ここにきて計画素案の協議も終わり、いよいよ計画書の提出の段階にさしかかっているので、この機をとらえてその特徴を紹介してみます。

第一。結成されたフォーラムの構成メンバーから。居住者も多いビジネス近隣エリアであることから、その構成に注目してフォーラム認可時の51名の肩書きをみると、居住者系34(個人19、団体15)、ビジネス系17(一般6、不動産2、トレーダー団体2、博物館等3、まちづくり団体4)です。「まちづくり団体4」の内訳はNew West End Company1、Bond Street Association2、Regent Street Association1。フォーラムはオープンにされていることから、このあと出入りがあったと思われますが、特定の団体等に偏ることなく、まんべんなくメンバーが集まった(を集めた)様子がわかります。
第二。近隣計画素案(2017.6。⇒関連資料1)の特徴。きわめて高質なデザインと内容です。また、目次をみると、第1章のイントロに続き、第2章から5章が政策。第2章「Transforming Public Realm」、第3章「Directing Growth」、第4章「Enhancing Experience」、第5章「Building on Heritage」とメイフェアならではの内容が続きます。第6章から9章がマネジメント等に充てられています。今、「メイフェアならではの」と書きましたが、こうした目次構成はこれからの都市計画の主要な内容になっていく予感がします。
第三。この素案を地元協議に付したところ(2017.6.13〜8.1)多数の意見が寄せられました。概ね計画内容には強い支持が得られたものの、1つだけ半数程度しか支持のなかった政策があり、その政策だけに絞った再協議が2017.10.28〜11.15の間に行われました。その政策とは、グリーンスペースにおけるイベントを扱った政策MGS3(のうち(鄯)の(c))で、イベントを開催してよいのは最もグリーンの利用が少ない時期(10月から3月まで)のみである、との内容でした。あまりに厳しすぎる内容との指摘が多く、それは再協議でも同様な傾向を示したため、最終案においてはこの政策は削除することにしたようです(2017年11月末時点)。
第四。第3章第3節「Park Lane」で提案されている政策は大胆です。ハイドパークとメイフェアの間を走るこの幹線道路は、その中央に公園のような分離帯をもつのですがあまり使われていません。一方でメイフェア側の歩道は安全上も環境的にも問題があるので、政策MPL1では、道路部分をハイドパーク側に寄せて、いらなくなった道路部分と歩道部分を一体化して公園付き歩行者空間にしようとする政策です。しかしプロジェクトとしてそれを書こうとすると「それはディベロップメントプランには馴染みません」とされてしまうため、政策内容としては、「Park Laneに関連する範囲の開発から負担金をとって基金をつくり、それを用いて実際に採用されうる提案へと高めるとともに、承認が得られたならばそれを実行するために使います」というものです。かなりイノベイティブな内容にみえます。しかしイノベイティブな分、近隣計画提出後に行われる審査官のチェックでいろいろ言われるかもしれず、また、政策として認められたとしてもこれを実行するためにはかなりの努力が必要と思われます。

まだこの近隣計画は策定途中。最終的に住民による投票とビジネス主体による投票の2つの投票があります。しかしおよその骨格は現時点で出そろっていると考えられ、これまでの近隣計画と比較してもいくつもの進化がみられるこの近隣計画に注目していきたいと思います。


[関連資料] 下記ページの右にある「Download the full plan」より。
https://www.mayfairforum.org/the-plan/