『THE PORTLAND EDGE』

とある仕事で、初めてポートランドに行ってきました。ごく短期間のため都市そのものへのコメントは控え、かわりに、ポートランド州立大学の教員らが中心になって2004年に同大学から発刊された標記図書について紹介します。
Conny P. Ozawa編。副題は「Challenges and Successes in Growing Communities」。

一言で本書の特徴をいうと、手放しでポートランドは良いとする情報が多いなかで、また、その裏返しとして問題点をあげて、行きすぎたやり方を批判する言説もあるなかで、できる限り客観的に、できる限り進化プロセスをていねいに紐解いて、ポートランドが達成したことは何だったを2004年時点でしっかり押さえていることです。
しかしながら本書の魅力は単に客観的であるというよりも、自らも何らかの形で関わってきたそれぞれのテーマに責任と愛情と誇りをもち、できるだけ正確に、かつ前向きに各章が書かれていることにあると思います。
2004年から14年後の2018年のポートランドにも大きな課題があることを頻繁に聞きました。
なかでも2004年に既に書かれていたホームレス問題は、(おそらくは全米で問題になっている貧富の格差問題を背景としながら)ポートランドで深刻になっているととらえられていて、様々な政策も検討されているようです。

改めて考えれば、課題の内容こそ違えど、当時の深刻な課題に時間をかけて真剣に立ち向かった結果、イノベイティブな成果が積み上げられてきたといえます。このことは、2章全体を通して強く強調されていますし、他の章でも個性豊かに描き出されます。ある意味、各章の著者の顔や研究実践の姿そのものが思い浮かぶような感じがします。

取り組みの結果の指標ともいえる「住みたい都市」度については、またの機会に考えます。