アベニュー/ストリート/ブロック

ポートランドで最も興味をもったのは、およそ60m四方の小さな街区(ブロック)です。事前ミーティングでこのことが話題になり、「本当?そんな小さいわけないでしょ」などと、当初は信じられなかったのですが、歩いてみるとある意味、ポートランドという街の雰囲気を決定づけるのがこのことではないかと思えてきました。少しこのことに注目して都市イノベーションworld的テーマにひろげてみます。実は、今回は「都市イノベーションworld」第50話。いつものようにここで一旦区切り、改めて4月から「都市イノベーションworld(2)」をはじめます。

第一。なぜポートランドの最初の都市計画レイアウトの際、60メートル四方にしたのか。山崎(『ポートランド −世界で一番住みたい街をつくる』p38)によればそれは、「街を開発した地主たちが、角地が多い方が賃料を高くとれると目論んで」計画された、とあります。では、類似他都市はと、おおざっぱに測ってみると、北隣のシアトルはおよそ80メートル角。面積が6400㎡と大きくなるため所々で背割り線が入り2分割されます(6400÷2=3200。ポートランドの60×60=3600に近くなる)。さらにカナダに入りバンクーバーをみると50m×130メートル。面積6500㎡。少し飛んでニューヨークは山崎の同書で274m×80mと紹介されています。面積21920㎡。以前、薄暗くなったNYを274mの辺に沿って歩いた際、なかなか角までたどりつけず不安になったことを思い出します。「アメリカで最小といわれている」(山崎同書、同頁)60メートル角の街の雰囲気は独特なものです。昨日、バルセロナ帰りのN先生は400メートルを3で割ったバルセロナ市街地は巨大に見えたというようなことをおっしゃっていました。(←道路部分もあるため街区は113.3m四方。ただし街区の角が削られている)
第二。ブロックに注目すると第一のような見方になりますが、そもそもブロックとはアベニューとストリートで切り取られた結果でもある。そうすると、60メートル角という「最小」のブロックを成立させる道路とは、どういうものか。これも歩いてみるとかなりの驚きで、特にストリートはとても狭い。ストリート側が狭いのは一般的とはいえ、そうしたところにLRTがゆっくりと、ゴトゴト音を立てながら行ったり来たり(正確にいうと、「行ったり」or「来たり」。道路が狭くアベニューもストリートも一方通行になっているため)しているのを見ると、「おお、こういう風になるのか。」とまた驚かされます。さきほどの解説を受けるなら「賃料を高くとれる」ようにするにはあまり道路が広すぎるのもよくないし狭すぎるのもいけない。
第三。ところどころに入っているイレギュラーな部分が興味深い。特にポートランドでは第8と第9アベニューにあたる道路の間の街区幅が半分ほどしかなく(ストリート間は60mのまま)、そこが線状に公園化されている(左右の道路部分も含めるとそれなりの幅になる)。その線状公園に沿って大学や文化施設が立ち並び、多様で独特な雰囲気をつくっている。当初計画ではこれをずっとつながる緑道にするはずだったが、民間に売却されてしまったりして一部できなかった部分がある。
第四。この「できなかった」部分について、「できなかった」のか「まだつなげるつもりで事業化の最中」なのか考えるのもおもしろいのですが、逆に、現状の未完成的な部分もおもしろい。例えば一ブロックのみが独立してスクエア風に開発・再生された箇所があり、そこは驚くほど立体的にさまざまな交通機能を支えているほか、スクエアを取り巻く土地利用との関係をつくっている。

以上、まるでパズルのような話ではありますが、横浜関内はどう設計されたのか、ポートランドやシアトルやバルセロナとどう違うのか、どこが似ているのか、東京都心部はどうか、、、などとこだわってみると、いろいろなことが見えてきそうです。 <都市イノベーションworld・おわり>

[参考]
【コンセプトノート】都市イノベーション
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20141110/1415588957