新NPPF案 : イングランドの次期都市計画システムをめぐる議論

2018年5月10日をもって、新NPPF案(National Planning Policy Framework案。イングランドのみ対象。2012年に設定以来の大幅改定。)の協議期間が終わりました。次期都市計画システムをさらに変えようとするこの提案にはいろいろな要素を含みますが、ここでは、法定都市計画の基本となるディベロップメントプランの内容の変更提案と、それに対する反応をごく簡単にまとめてみます。

第一。地方自治体は最低限、「戦略計画」を用意しなければならない。このことは既に2017年「Neighbourhood Planning Act」第8条に別の表現で規定していました(development plan documentの中で「strategic priorities for the development and use of land」を明らかにしなければならないとしている)。これまでの都市計画システムにおいて、市町村と広域との調整の困難さから、どちらかというと戦略的計画は廃止して市町村が策定するローカルプランの比重を高めてきたことと、一見逆行する方向です。また、2017年法では「development plan documentの中で」とだけしていたものを「戦略計画」を用意しなければならないと提案したことから、RTPIやTCPAといった専門家集団からは、それは行き過ぎではないかとの反応(反論的意見)が出ています。
第二。政府案ではこうしたことが可能な背景として「近隣計画(これもディベロップメントプランの1つ)」がかなり普及してきたので、ローカルな政策はそちらでも受け止められると考えているようです。「戦略」をどうとらえるかにもよりますが、新NPPF案では「そういう重要なことこそ地方自治体の仕事」と考えているようであり、一方の専門家集団側では、「戦略だけに絞ったら、個々のplace-makingができなくなる」との危惧を強く持っています。
第三。専門家集団側からの修正案としては、たとえばRTPIを例にみると、(ローカルプランの)ローカルポリシーは「can(つくることができる)」ではなく「should(つくらなければならない)」とするか、(ローカルプランがそんなに問題だと思うなら)ローカルプランに規定できる政策の種類を特定したらどうかと逆提案しています。また、第二の点の近隣計画にローカルな政策を担わせるとの政府案も、近隣計画が策定されていない場所では政策ギャップが生じてしまうなどの危惧を示しています。

さて、新NPPFはどのように決着するか?
いずれ近いうちに、政府側から今回の協議結果を踏まえたNPPFが示されるものと思われます。2011年Localism法施行から5年強が経過し、近隣計画が多くの場所で策定中もしくは策定済みという新たな局面を迎えて、今回は「次の」都市計画システムが提案されています。戦略計画の義務化は新たな政策というよりむしろ、基礎自治体が共同してそうした計画をつくることの困難さを強く認識した結果でもあると推察します。
ごく最近のデータでは、EU離脱(まだ交渉中ですが)の影響もあって流入人口が減り人口増加問題は落ち着いてきているようです。
近隣−市町村−広域−サブリージョン−リージョン−国−超国家の間の、どこが何を決めるべきかというシステム調整・システム分担の方向を決める、重要な協議といえそうです。