自治体が自ら会社を設立しデベロッパーとなる団地再生をめぐる是非(Homes for Lambethの話)

民間事業者依存のアフォーダブル住宅供給では不安定なため、この際、自治体自らが会社を設立して団地再生をしようと設立されたのがHomes for Lambeth(council-owned SPVと呼ばれる。SPV=Special Purpose Vehicle)。自治体が100%出資する会社で、2015年にロンドン都心のランベス区でその設立が承認されました。
計画によれば、民間マンションなどに市場性のある区内の既存公営住宅団地(再生が必要とされる)を建替えたり新規の開発を行うことで、結果的に1394戸を建替え3400戸以上に増加できるというビジネスプランです。

そのフロントランナーとして2018年3月に事業のゴーサインが出たのがKnight’s Walk団地とWestbury団地の2つ。後者は82戸を建替えて270戸に、前者は18戸を建替えて84戸と予定(戻り入居するが、一部転出したり、住宅所有関係の異なる住宅となる。また、公営住宅相当の住宅になったとしても法の適用は受けない)。
行政がそんなことまで手を出して大丈夫かと心配になりますが、労働党が議員のほとんどであるランベス区としては、財源も無く、団地は老朽化しており、民間任せにもできず(したくなく)、リスク承知の(むしろリターンの大きさに注目した)選択です。
もともと修繕ですまそうとしていた団地が建替えに組み入れられるなど、火種となりそうな問題も出てきています。裁判になっている案件も。
けれどもこの動きはランベス区にとどまらず、文献(⇒参考文献)によれば、Reside and Be First(Barking and Dagenham区)、Red Door Ventures(Newham区)をはじめ、その他多くのロンドン区にひろがっているようです。

[参考文献]
Demolishing the present to sell off the future? : The enlargement of ‘financialized municipal enterpreneurialism’ in London, Joe Beswick and Joe Penny著, International Journal of Urban and Regional Research, 612-631, 2018.