『時のかたち』

鎌倉でいつも立ち寄るT書房。
棚の上方に、ポツンとSD選書が1冊だけ背を向けて並んでいるのに気づきました。「こんな小さな書店でSD選書というのもめずらしい。」と、タイトルを見ると、『時のかたち』。鹿島出版会2018.8.20刊。ジョージ・クブラー著、中谷礼仁・田中伸幸訳。なんとも魅力的なタイトル、、、
1962年のクブラーの代表作とされる本書。ワクワクする内容です。

「prime objects(素形物)」とは第一の発明群のことであり、「replications(模倣物)」とは、重要な芸術作品が通過したあとに漂っている複製、再生品、写し、縮約版、変形物、派生物といった模倣の系統全体のことだとして、さまざまな例があげられます。「分類された出来事は、粗密に変化する時間の一部として群生していることがわかる」(p.189)との見方から、都市(計画)にかかわりそうなものを探すとたとえば、「拡張されるシリーズ」と「さまようシリーズ」があげられます。前者の例として「前五世紀のギリシャ地方の建築芸術の反映は、それ以前にすでにギリシャの都市が地中海西部の植民地にまでひろがっていたという有利な状況を反映していた。ローマ帝国の建築も、伸長する植民地建設から同じように利益を得ていた」(p.216-216)。後者について、「その変化が最も現れているのは、よく知られているように、中世ヨーロッパ建築の中心が地方の僧院から市中の大聖堂、そして都市全体へと移り変わっていったことである」(p.217)。それら「シリーズ」が群生しているさまが、『時のかたち』だとすると、「都市は時のかたちである」「ある時期に卓越してなされた都市計画は時のかたちとなる」、などどといえなくもありません。