『都市の起源』

世界最古の都市はどこか。
本ブログでは日本の最古の都市といえるようなものだったかもしれないと言われている纏向(まきむく)遺跡について紹介していますが、世界最古となると、、、
本書『都市の起源』(小泉瀧人著、講談社選書メチエ620、2016.3.10刊)では、考古学の最新の成果をもとに以下のように推定しています。まさに世界最古の「都市」を『時のかたち』として推定する作業の中間報告。

第一。従来から世界最古の都市と言われてきたジェリコは、そうではないと却下。
第二。却下の理由でもあるのですが、「都市的集落」が「都市」といえるようになるための3つの必要十分条件をあげます(1950年代にV.G.チャイルドが唱えた説にもとづき筆者が提唱)。「都市計画」「行政機構」「祭祀施設」。
第三。これをあてはめ、今から5300年ほど前にあらわれた「ウルク」を最初の都市と推定。そのすぐあとに、「ハブーバ・カブーラ南」と名付けている都市ができたと推定。
第四。しかし「ハブーバ・カブーラ南」のほうは短命に終わる。もともとこの都市は銀採掘のための新都市のようなもので、川に沿って排水に適さない方位に都市をつくってしまったため用をなさなくなったと推定。(持続的な都市はどれも自然にうまく呼応して立地している)

このように「都市」を定義すると、少しずつ発掘中の纏向遺跡が仮に「都市的集落」と確定できたとしても、「都市」かどうかを判定するにはまだまだ道のりがあり、もし纏向遺跡が単なる「都市的集落」だったとすると、最初の「都市」はどこかを考えなくてはならないことに。あくまで1950年代に提起されたチャイルド説や本書の見解に則るならばの話ですが。

【in evolution】世界の都市と都市計画
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